「はやぶさ2」、最大のミッションに成功
小惑星リュウグウの探査を続けている探査機「はやぶさ2」は、4月5日(金)、リュウグウにインパクタ(衝突装置、Small Carry-on Impactor=SCIと略)をぶつけ人工クレーターを生成する挑戦に成功した。
2014年12月3日に種子島宇宙センターにてH-2Aロケットで打ち上げられてから5年と4ヵ月、このミッションではこれまでで最大の挑戦だった。

管制室のあるJAXA相模原キャンパスの宇宙科学研究所(宇宙研)の構内では、桜の巨木が満開で、ときおり吹き寄せる強い風による花吹雪が舞っていた。その花吹雪の先の建物で緊張のオペーレションが続いた。

この日、宇宙研では、午前8時半にプレスセンターがオープンした。

会場は昨年2月に開館した宇宙科学探査交流棟(約1000m2)の一角にしつらえた臨時会場だが、場所が狭いため人数制限があり参集した報道陣は約80人だった。
宇宙科学探査交流棟には、「はやぶさ初号機」の再突入カプセルなど、宇宙研の1955年以降の宇宙への挑戦の歩みを物語る実物が展示されているが、臨時プレスセンター頭上には、天井から「はやぶさ初号機」とともに「はやぶさ2」の原寸大の模型が吊り下げてあり、今日、探査機から分離しクレーターを生成するための衝突装置の形がよく見えた。

小惑星表面に人工クレータを作るために開発されたのがインパクタだ。本体は直径265mm、全長170mmの円柱型で重さ14kg、そう大きいものではない。探査機内部側に4kgの分離機構がつく。
インパクタはいわば大砲で、砲弾に相当する爆薬を詰めた衝突体(ライナー)と一体で、まず、そっとそれを分離する。その「砲弾」は底が尖った中華鍋のような形をしており質量約9.5kg。尖った尾部にブースタと呼ぶ信管があり、これに点火すると中華鍋内のPBX(Polymer bonded explosive)爆薬約4.7kgが炸裂、中華鍋の蓋に相当する円形の銅板が飛翔、家一軒を破壊するほどの衝撃力でクレーターを作るのだ。
インパクタによるクレーター生成は人類初の未踏の挑戦であるだけに、万一のトラブルに備えて2基搭載したかったようだが、「はやぶさ2」は厳しい重量制限からかなわなかった。
また、「はやぶさ2」がクレーター生成時に飛散する岩石で破損しないよう、リュウグウの裏に逃げるのだが、その移動をかなりの速さで行わなければならない。その際、スラスタと呼ぶ化学推進エンジンの燃料(ヒドラジンと酸化剤)をかなり消費する。その燃料搭載にも余裕がなかったため1基のみ搭載。クレーター生成は一発勝負なのだ。


開発者たちが語った「技術の心臓」
このインパクタの詳細を初めて伝えたのはおよそ5年前、拙著『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』(講談社ブルーバックス、2014年11月刊)の「第5章 爆弾搭載計画」だった。