2019.04.18
# 経済・ビジネス

新元号「令和」には、一体どこまで「便乗ビジネス」できるか

ビジネスが成功する「知財」の基礎知識

「令和」の商号登記は可能?

また、「令和」を含んだ会社名を「商号」として登記して使用することは、基本的に自由にできます。「商標」と「商号」を一緒くたに考えている方もいるかもしれませんが、両者はまったくの別物です。

「商標」が商品・サービスの目印である一方、「商号」は「商人が商売を行う際に自己を表示するために用いる名称」のことです。会社の場合は、株式会社や有限会社など、その種類を表す文字を入れる必要があります。また、商標登録のための出願手続きは特許庁に対して行いますが、商号の登記は法務局で行います。

「令和○○○」が既に商号として登記されている場合でも、それと同じ商号を登記することも可能です。

かつては、「類似商号規制」というものが存在し、同業者の同一市町村内における同一・類似の商号の登記が禁止されていましたが、2006年に撤廃され、現在はそのような制限はありません(同じ本店所在地に同じ商号の会社の登記をする場合を除きます)。

ただし、「不正の目的」をもって他の会社であると誤認されるおそれのある名称・商号を使用することができない点には注意が必要です。

このように、商号については、他人から妨害されずに自らの商号を使用できる権利(商号使用権)のほか、自らの商号と誤認されるおそれのある商号を他人が不正に使用することを排除できる権利(商号専用権)があり、これらをまとめて「商号権」と呼びます。

これまでも、新たな元号が出現するたびに、それにあやかった会社名が登場してきました。実際に、「平成」「昭和」「大正」「明治」など元号を含むものは、多数存在しています。たとえば、「平成」を冠する企業は、今月1日現在で、1270件もあります。

東京商工リサーチが調査を実施したところ、今月1日時点で「令和」という漢字を冠する企業はひとつもなかったのに、その後わずか10日間で30社も誕生したそうです。

今後も、「令和」を冠する企業が次々と出現することは間違いないでしょう。

商標権侵害や不正競争行為になる?

ところで、「令和」を含む商号が登記できた場合でも安心はできません。その商号を使用する行為が、他人の商標権を侵害したり、「不正競争防止法」で規定する「不正競争行為」に該当したりする可能性があるからです。

不正競争防止法では、①周知な(ある程度知られている)他人の商号や商標などと同一・類似のものを使用して混同を招く行為や、②著名な他人の商号や商標などと同一・類似のものを使用する行為を「不正競争行為」としています。

ですから、「令和〇〇〇」が他人の商号や商標としてすでに周知・著名となっているときは、それと同一・類似の商号や商標を使用すると、不正競争行為に該当し、使用の差し止めや損害賠償を求められる可能性があります。

そのため、「令和」を冠した商号や商標を思いついたとき、他人による使用や出願の実態がなければ、なるべく早めに使用を開始し、自らの商号や商標を周知・著名にすることが第三者による便乗商法を防ぐためにも最善の手立てであると言えるでしょう。

また、商標登録は基本的に「早い者勝ち」ですから、いち早く商標登録することが得策です(ちなみに、4月16日の共同通信の記事によると、月桂冠による「令和蔵」などをはじめ、元号公表から3日間で、「令和」の文字を含む商標登録出願の数は23件に上っているとのことです)。

「令和」のドメイン登録は可能?

さて、「早い者勝ち」という観点では、商標よりも登録容易なものとして「ドメイン名」(xxx.com、xxx.co.jpなどに代表されるインターネット上の住所)が挙げられます。

新元号の発表直後、東京都板橋区の「レイワ工業」の「reiwa.co.jp」や、豪州の「西オーストラリア不動産協会(REIWA:The Real Estate Institute of Western Australia)」の「reiwa.com」など、「reiwa」をそのドメイン名に含む既存のホームページにアクセスが殺到したそうです。

また、GMOインターネット(「お名前.com」を運営)が取り扱っている数百種類の「reiwa」単独の文字が付いたドメイン名を巡って激しい争奪戦があり、ほぼ完売状態になっているといった報道もなされています。こちらは転売目的によるものが多数を占めているのではないかと思われます。