2019.04.21

私大入試の難化の一因…?指定校推薦の「語られざる問題」

年々増えているようですが…
田中 圭太郎 プロフィール

推薦入試はいつ増えたか

私立大学の難化は1990年代前半に第2次ベビーブーム世代が受験期を迎えたことで、一層激しくなった。ところが、この時期を過ぎると、今度は推薦枠が一気に増えていく。

AO入試は慶應義塾大学が1990年に開学した湘南藤沢キャンパスの学部で初めて実施された。10年ほどの間はあまり広がらなかったが、2000年代になって多くの大学が導入するようになった。

さらに国公立の大学でも、推薦入試やAO入試が導入されるようになった。昨年は国立大学では推薦とAOによる入学者が約16%を占めている(参照:平成30年度国公私立大学入学者選抜実施状況)。国立大学には基本的には指定校推薦枠はないが、工業高校からは工学部、農業高校からは農学部、商業高校からは経済学部など、普通科以外の高校からも推薦で受けることができる。2016年からは東京大学が推薦入試を、京都大学が特色入試を導入した。

多様化した推薦入試の中でも、指定校推薦には私立大学にとって一定数の学生を確実に確保できるというメリットがある。枠を使う受験生が増えても、その分一般入試の合格者を減らすことで門戸を狭くすれば、学部の偏差値が上がるので、大学にとってマイナスはない。

つまり、指定校推薦入試の目的が、優秀な学生を確保することから、経営安定のための手段に変わってしまったのだ。定員割れの大学の中には「日本全国の高校に指定校推薦を出している」と明言するところもある。大量に枠を出しても応募がない大学も珍しくなく、1人でも間違って入学してくれれば儲けもの、というのが本音だろう。

 

保護者が歓迎…?

一般入試が難化している時だからこそ安全志向が強まって、指定校推薦で合格したいと考えるのは「受験生よりもむしろ保護者だ」という指摘もある。

トップクラスの進学校では、もともと指定校推薦の枠があっても使わないところが多い。進学校では団体戦の雰囲気で受験に臨んでいるため、指定校推薦で早く合格が決まって、勉強を辞めてしまう学生が出てくると、入試まで団結して頑張ることが難しくなるからだ。

ところがある進学校では、従来はMARCHの指定校推薦枠を持っていても使っていなかったが、「枠を使わせてほしい」と保護者が学校にクレームをつけてきたそうだ。

今年は首都圏の私立中学の受験で、大学の付属校の人気が上がった。背景にはもちろん私立大学の難化がある。同様の理由で、中高一貫校や高校を選ぶ場合に、その学校がどの大学に指定校推薦の枠を持っているかを重要視する保護者もいるという。

大学通信が毎年出版している「私立中学校高等学校受験年鑑」では、各高校が持っている指定校推薦の大学名を掲載している。アンケート調査をした際、多くの高校がその大学名を答えていることから、高校側もそのニーズを感じ取っているのだろう。

保護者にしてみれば、できれば子どもに浪人はさせたくないという思いがある。さらに受験が1回で済むことで、受験費用を最小限に抑えることができる。首都圏の場合、一般入試で大学受験をすれば、滑り止めも含めて10回近く試験を受けることも珍しくないからだ。

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