2019.04.17
# 企業・経営

固定電話が「巨大なリスク」になっていることに気づいていますか

いまやデメリットのほうが上回る

どの家庭にも必ず1台はあった固定電話が、今や危険な存在となりつつある。携帯電話へのシフトが進み、若年層の間では固定電話を持たない人が増えてきたことで、固定電話に加入していることは高齢者であることと同義になりつつある。固定電話の加入者は、強引な勧誘の電話や振り込め詐欺などの格好のターゲットとなっている。

〔PHOTO〕iStock

営業や勧誘は固定電話に集中する

今年の2月、東京都江東区で80歳の女性が殺害されるという事件が発生したが、被害者が殺害される2週間ほど前に資産状況などについて尋ねる不審な電話があったという。渋谷区でも電話の後に強盗が家に押し入るという事件が発生しているほか、全国各地でも似たような不審電話の情報が寄せられている。

電話を使った犯罪といえば、真っ先に思い浮かぶのが「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」だろう。息子などを名乗り、一方的に電話をかけて現金を振り込ませるというものだが、一般的にこうした詐欺を行う犯罪者と強盗を行う犯罪者は種類が異なるとされる。

だが、振り込め詐欺やオレオレ詐欺については、金融機関での水際作戦などによって成功率が低くなったことから、これまで詐欺を行っていたグループがより凶悪な強盗に転じたとの見方もある。

一連の犯罪には固定電話の存在と、電話に対する利用者の意識が密接に関係している。

犯罪とまではいかなくても、今や固定電話には過剰なセールスや勧誘など、加入者にとって不都合な連絡ばかりがやってくる。筆者も自宅に固定電話を残しているが、留守番電話を聞くと、金融商品や不動産の勧誘などセールスの電話が何件も録音されている。留守電なのでメッセージを残さない人もいるが、ざわついた音が聞こえるのでオフィスからかけている可能性が高い。

昼の時間帯はたいてい留守電になっているにもかかわらず、これだけの電話があるという現実を考えると、高齢者で電話に出る世帯にはセールス目的の電話が集中している可能性が高い。実際、電話に出る高齢者の番号はリスト化されており、ネットで売買されている状況である。

 

固定電話加入者の争奪戦

2016年時点における固定電話の加入者数(050番号のIP電話を除く)は5539万となっており、10年間で15%ほど減少した。だが、この数字には少し注意すべき点がある。固定電話の加入者数の中には、0ABJ番号(いわゆる03や06の番号)を使ったIP電話が含まれている。具体的なサービス名で言えばNTTの「ひかり電話」である。

かつてほどではないが、NTTはひかり電話へのシフトを促す営業活動を継続的に行っているので、0ABJ番号のIP電話の加入者数も徐々に増えている。だが、ひかり電話に変えたところで見た目や使い勝手にほとんど変化はないので、わざわざひかり電話に切り替える加入者というのは、コストに敏感な法人(あるいは個人事業主)か電話について関心の高い個人ということになるだろう。

逆に言えば、今の段階でも従来型の固定電話を使っている加入者は、高齢者や通信サービスにあまり興味がない個人である可能性が高く、この層は、電話による勧誘ターゲットと重なっている。

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