そして、東京福祉大学が登場した……
しかし、「特定技能」外国人の受け入れはまだ始まっていない。今年4月から、やっと受け入れに向けた選考試験が一部の職種で開始したばかりだ。
結局、うどん店への就職は実現せず、タン君は進学先を探すことになった。そして見つけたのが東京福祉大学だった。
東京福祉大学は留学生の数が日本で2番目に多い大学だ。独立行政法人「日本学生支援機構」(JASSO)の資料によれば、その数は2018年5月時点で5133人を数え、トップの早稲田大学の5412人に次いで多い。ちなみに第3位は東京大学の3853人である。
ただし、東京福祉大学の場合、大学の一般学部や大学院に在籍する留学生は1000人にも満たない。約1500人が「日本語別科生」、約2700人は「研究生」として在籍している。
日本語別科は大学内に設けられた日本語学校と言える。留学生は日本語学校と同様、最長2年にわたり在籍できる。一方、研究生は主に日本語学校の卒業者を対象として、大学や大学院への進学準備をするための1年コースである。
この研究生コースで、過去1年間だけで700人近くの所在不明者が出ていることが今年3月に発覚し、メディアのみならず国会でも問題となった。タン君が進学するはずだったのも研究生コースである。

「金の成る木」が3倍以上に激増
東京福祉大学が研究生コースをつくったのは2016年だ。すると日本語別科を中心に前年には1403人だった留学生の数が3000人へと急増し、その後も翌17年には3733人、18年には5000人以上へと増え続けていく。研究生コースには定員がなく、大学の裁量でいくらでも受け入れられる。研究生は非正規学生という扱いで、学生数に応じて支給される私学助成金の対象にならないからだ。
大学側にとっては、まさに「金の成る木」である。研究生コースの学費は年62万8000円に設定されているが、3000人を受け入れれば19億円近くの収入となる。同大の“成功”に倣い、研究生コースや日本語別科を設ける大学は全国で急増している。
東京福祉大の研究生コースは、“偽装留学生”には極めてありがたい存在だ。日本語能力を問われず入学でき、学費も一般的な大学や専門学校よりもずっと安い。しかもアルバイトが豊富な東京にあって、授業は週3日の午前もしくは午後のみ(90分授業が週7回の計10時間半)しかない。
結果、東京福祉大は進学先が見つからない“偽装留学生”の「最後の砦」となってきた。同大側も『JNN』の取材に対し、「日本語学校を出ても受け入れ先がないという現実があり、研究生の受け入れは感謝されている」(2019年3月20日)と「最後の砦」の役割を認めている。