
ただ、日本では一般の大人の恐竜ファン層が非常に分厚いんです。中国の大人の恐竜ファン層に比べて数も多く、古生物学に対する理解も深い印象です。国内から新しい恐竜化石が出ればほぼ必ず報道されますし、一般社会からの関心も高いですよね。
アカデミックな研究水準についても「恐竜化石が出にくい」国ながら、幅広い年齢層の研究者が日々研鑽を繰り返しており、国際的な評価を得た研究も少なくありません。
また、私を含めて海外に留学して古脊椎動物学を学ぶ学生もいます。
――中国国家から、恐竜研究に対する金銭的な補助は手厚いのでしょうか?
恐竜の研究だけにとどまらず、中国におけるアカデミックな研究環境全般に言えることですが、日本よりも補助は手厚いと思います。学部生から博士課程までの返済不要の奨学金制度や、その後のポスドク制度、就職先の数や福利厚生、募集される研究費の数に至るまで、残念ながら現時点では日本に対して大きな差をつけている印象を受けます。
――学問には一定のお金が必要であることも、やはり事実ですもんね。
日本では恐竜や古生物学に対する一般社会の関心は高いいっぽうで、専門の教育機関の不足や、研究者を受け入れる研究機関の不足が深刻です。近年、教育機関については徐々に改善が見られつつあるとはいえ、研究者を受け入れる機関の不足はいまだ大きな問題です。
どこでどのような恐竜が見つかるのか
――最近は遼寧省の熱河層群が有名ですが、ほかに中国で恐竜の出土が多いのはどのあたりですか?
代表的な場所は、内モンゴル自治区のエレンホト(二連浩特)、新疆ウイグル自治区の五彩湾、甘粛省蘭州付近、四川省の自貢、雲南省の禄豊、河南省の汝陽、山東省の莱陽、黒竜江省のロシア国境付近……と、このあたりで止めておきましょうか(笑)。
これらは現地にジオパークがあるような、大規模な恐竜産地ですが、他にも細かい産地はもっとたくさん存在します。非常に大ざっぱに分けるなら、中国の北部は白亜紀の地層、南部はジュラ紀の地層が露出する傾向にあります。
――なるほど。もうすこし具体的な恐竜名を挙げていただいていいですか?
たとえば中国北部の場合、内モンゴルは外モンゴル(モンゴル国)と場所的にも時代的にも近い地層が分布しており、プロトケラトプスやプシュッタコサウルスといったアジアに特有の角の無い角竜の仲間が見つかります。
甘粛省は主に白亜紀前期の地層から恐竜が見つかっており、やはり角のない基盤的な角竜の仲間や、テリジノサウルス類が多数見つかります。遼寧省熱河層群は日本でも有名な、白亜紀前期の羽毛恐竜の代表的な産地です。新疆ウイグル自治区ジュンガル盆地の周辺ではジュラ紀の地層が分布しており、最古級のティラノサウルスの仲間が知られています。