2019.05.09

元経済ヤクザの告白「私が2億の損失を抱えても日産株に期待するワケ」

これは、株式市場を試すある実験だ
猫組長

「神」を殺す「神」を開発した

現在の株式市場において、AIが行う株の売買が、創造主である「人間」にさえ理解できない「神託」のごときものになっていることは『元経済ヤクザが明かす、人工知能との「仁義なき投資戦争」の壮絶現場』で書いた。

実は、出来高増とともに荒い値動きを続ける「大塚家具」株の売買の中では、「AI」が暗躍していた。

現在のAIは株売買において「アイスバーグ」と呼ばれるアルゴリズムの注文手法を多用する。アイスバーグは氷山という意味で、大量の売買注文を少量に分割して発注する非表示注文の事だ。板情報に見えている注文が氷山の一角であることからこう呼ばれている。

アイスバーグ注文は、株価への影響を最小限に抑えつつ、密かに大量の売買注文を執行するために行われるものだ。簡単に言えば、スライス(小さく分割)した売買注文をを発注するステルスオーダーである。

現在のAIアルゴリズムは、株売買において「アイスバーグ」(氷山)取引を行っている。株をスライス(小さく分割)して取引をすることで、大量の売買を成立させているのだ。だが現在の機関投資家や、資本量を持つ個人投資家で真正直にこれをやっている人間を私は知らない。多くのAIは、「見せ板」を使いながら「アイスバーグ」を成立させている。

説明しよう。

いま、ある銘柄が「1000円」でもみ合っているとする。ここで「1000円」に1億円の買い注文を出して約定させたいとする。しかしいきなり1億円の注文を出せば「壁」ができてしまう。すると多くの投資家は「1000円」に「買い」の注文を入れてしまい、1億円分の約定はできなくなる。

そこで別の口座から、1001円に7000万円と1002円に3000万円の「売り注文」の「見せ板」で壁を作る。壁の厚さに怯えた投資家は、「1000円」に売りの注文を入れ始める。その売り注文に合わせて1億円を極めて薄く分割しながら取引をする。

すると表の板の上では買い注文が動かないように見えるが、水面下では大量の売買が約定していることになる。AIはこの「アイスバーグ」を実行するために、ナノ秒(10億分の1秒)の中で注文の計算、修正をして最適な発注を繰り返していく。

こうして「1000円」で手に入れた株を、今度は、「1001円」の「売り」でアイスバーグを行えば、秒の単位の中で10万円が儲かることになる。

【PHOTO】gettyimages

本来「見せ板」は違反だが、ナノ秒の中ではそれが間違いなのか不正なのかを判断するアルゴリズムは今のところ存在していないので、限りなくグレーだがセーフとなっているのが実情だ。

実際の戦いはこれほどシンプルではない。相場の地合、資本量、その時の株価は常に変動しているのだから、秒で「10万円」が稼げるはずもない。だが、日本の株式市場は前場・後場合わせて5時間=18000秒だ。AIは疲れることも集中力を切らすこともなく、ナノ秒の繰り返しを行い、莫大な資本が行き来させていることが今の現実だ。

板の上では動きが見えないことは、さながら海に浮かぶ小さな氷の下に存在する巨大な氷山のごとし。ゆえに、この取引がアイスバーグと呼ばれている(これを「ステルス」と呼ぶ者もいる)。かつては高性能コンピューターを用意できる機関投資家による寡占状態だった「ステルス」も、IT技術と高速通信網の普及によって一部個人投資家でも使えるようになった。

人には及ばない「神」のごとき領域でAIは莫大な利益をもたらしているのだ。

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