夢、叶えました
話を漫画に戻そう。編集者からのアドバイスをもらった私は、これまでのベタな少女漫画とはまったく違う、大人の男女の(合コンという戦場での)せめぎ合いを赤裸々に描いた、リアルな合コン漫画を完成させた。
画は上手いとは言えないが、味がある(と思う)し、内容は超オリジナルでタメにもなるし、これでデビューできない訳がないッ!
自信満々に持ち込みを始めたが、まさかの惨敗……(泣)。私に「得意分野がいいんじゃないか」とアドバイスをくれた編集者も、読んで笑ってはくれたが、「紙面でのデビューは正直難しい」と辛辣な意見を放った。
これ以上のモノは今の私には描けない……、漫画家になることは、もう諦めるべきなのか、いや諦めたくない、でも! と頭を抱える私に、さらにその編集者は「今の時代、紙媒体よりもウェブ媒体からの方がハードル低いし、読まれたりもする」とまたもアドバイスをくれた。
「それなら先に言ってくれよ~、でも私はウェブじゃなくて紙がいいんだ!」とモヤモヤもしたが、漫画を掲載しているウェブ媒体にアタックを開始した。
そして遂にウェブで漫画家デビューをすることができたのだ!
ちょっとだけ再発におびえながら
それから、ライターとしても仕事をはじめ、今では複数の媒体で執筆をさせてもらっている。今の目標は、PC1つ持って、漫画とライター仕事をしながら世界一周旅行をすることだ(今年叶える予定)。
乳がん治療を始めてから約5年でホルモン治療まで終え、6年目の今は、毎日再発防止のための薬を飲んでいる。
乳がんは、完治といえるようになるには、再発がない状態で10年の月日が経つことを要するというので、私は今後も4年あまりは薬を飲み続けなくてはならず、再発の検査を受け続けなければならない。
が、再発したとしてもまた治せばいい話だ。一度経験したものに対する人間の耐性は、案外強い。
乳がんは私の考え方を相転移させ、夢を叶えるきっかけくれた。だからといって「乳がんにありがとう」なんて言いたくないし、言えるわけもない。
家族にも迷惑をかけたし、思い悩んだ時間も膨大だ。返してもらえるなら返してほしい。
でも一方で、毎日いい加減に生きてきた私に、神様が“人生について考える時間”をくれたのか!?とも思うのだ。
乳がんのことを考えると、色んな思いが頭をめぐる。何なら今も治療中ではあるので、結論を出すのは難しい。
今は再発の可能性にちょこっとだけおびえながら、治療に費やしたお金を取り戻すべくバリバリ働きながら、これから行く予定の留学・世界一周(もちろん働きながら)のプランを考えている時がいちばん楽しいのだ。

結果的に、私は“乳がんになって良かった(かもしれない…?)”と思えるまでに至ったが、闘病中は世間の対応に激しく違和感を感じることも多かった。
次回はそのあたりの話をさせていただきたい。