日本企業が「終身雇用」を守れなくなっている本当の理由

外資型に変わらなければ生き残れない
外資はほんとうに悪役でしょうか? 年功序列や終身雇用といった日本特有の雇用慣行は本当に正義なのでしょうか? 外資を「効率」「生産性」の観点から眺めてみたら最強ではないでしょうか──外資歴45年、最強外資企業元トップが語る「外資流経営のすすめ」

日本企業は「外資型」に変わる

好むと好まざるとにかかわらず、近い将来、日本の企業は必ず「外資型」に変わっていくでしょう。なぜなら、外資型に変わらなければ生産性が低いままで生き残れないからです。

2018年9月、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長が、新卒を対象とした就職・採用活動に関する日程を定めた、いわゆる「就活ルール」の見直しを表明したり、あるいは、2019年4月に「経済界は終身雇用について、もう守れないと思っている」という旨の発言をされたりしています。

最近では、あのトヨタの豊田章男会長までもが「終身雇用を守るのは難しい」と発言されたりしていますが、これらの動きは、もはや日本企業が従来のシステムを変えなくてはならない時期に来ている一つの現れであり、日本の企業がこれまでの日本的経営慣行から外資型の経営にシフトしていく動きなのだと思います。

日本の社会では、外資というと、まだまだドライで冷酷なイメージが強いようです。しかし、外資で45年働いた私の経験から申し上げるならば、外資系企業のシステムは知れば知るほど効率的・生産的であり、「利益を上げる」という、企業としてごく当然の仕組みを徹底的に追求したシステムです。

そしてそれが、世界のスタンダードでもあります。

アメリカ企業の半分しかない日本企業の生産性

「日本企業の生産性が低い」という現実は、かなり前から指摘されています。ただし、どの点に問題があるのか、生産性を上げるためにはどうすればいいのか、といった具体的なアクションに結びつくような議論はまだまだ不十分と言わざるを得ません。

まずは簡単にふりかえってみたいと思います。

日本企業は生産性が低い──まずはこの現実を認識する必要があります。

この恐ろしい現実はデータが証明しています。まずは図1をご覧ください。

日本生産性本部の資料をもとに編集部で作成

この図を見て明らかなように、日本企業は化学、金属、建設など一部の業種を除き、アメリカ企業の半分以下の生産性しかないことがわかります。これは、製造業よりサービス産業分野に顕著に見られる傾向です。

人の生産性が問われるサービス業において、日本企業の低い生産性を悪い意味で支えているのが、日本企業独特の慣習です。

・新卒採用
・年功序列
・終身雇用

これらの制度は、日本企業ないし日本人の根底に「日本企業の良心」「最後の砦」と位置づけられている仕組みです。しかし、この「悪しき慣習」が生産性を落とす最大の要因となっていることに気づき、この仕組みを大きく変えない限り、日本企業に未来はない──私はそう思っています。

グローバルスタンダードの時代、こうした日本的な慣習から脱し、生産性を上げられない企業は、生産性を徹底的に重視した外資系企業に太刀打ちできなくなります。

生産性が上がらないために収益が上がらず、人件費が抑えられるため従業員のモチベーションも下がります。モチベーションが下がれば生産性を上げようとする行動にはつながらないので、さらに生産性は下がっていきます。

皆さんは、自分の努力や能力によって素晴らしい成果を上げても、成果を上げていない上司や同僚と給料が変わらない状態に、満足できるでしょうか。ましてや、同じ成果を上げたとして、それに報いる給料が外資の半分という現実に納得できるでしょうか。

能力のある人が正当に報われない日本企業に、魅力を感じるでしょうか。

外資系企業での経験が長い私の目から見ると、有能な人材ほど日本企業から脱し、外資へ向かっているのが現実です。