2019.05.23
# 銀行

アマゾン銀行が誕生…2025年、日本の「銀行」はここまで激変する

これから金融界に起きる「破壊」の全貌
田中 道昭 プロフィール

ATMがいらない世界

だが買い物に訪れたクリエイターは、午後一で予定を抱え、いますぐ現地に向かわなければならない。出来立ての手作りサンドイッチとドリンクを手に取ると、そのまま元の顔認証用のゲートを通過し立ち去った。決済はアマゾン銀行で自動引き落としされるので、レジに並ぶ必要もなく、所要時間は1分にも満たなかった。

ただし完全にキャッシュレスとなったわけではない。アマゾンゴーの入り口の一画には、メガバンクのATMも設置されている。まだキャッシュレスになじめない人や、プライバシーを重視する人のために設置されたものだが、すでに都内のATMはここを含めて30機にまで激減。いまやATMは平成の遺物のような扱いで、昭和の遺物の公衆電話と合わせて「どちらを探し当てるのが難しいか」というバラエティ番組が作られるようになっていた。さらに通帳利用者は通帳が有料化され、現金生活者にとっては不便さが際立つようになっていた。

〔photo〕gettyimages

変わったのは決済システムだけではない。メガバンクのビジネスも大きく様変わりしている。銀行員はいまやプロパーとしてグループ企業を統括する一部の総合職と、世界のビジネスを知り尽くした営業職やインベストメントバンキング職、またフィンテックを知り尽くすAIエンジニアの専門職に色分けされている。

 

このビルの5階にあるメガバンク支店の窓口は法人専用となっていた。いま中国企業のM&Aで画期的なスキームを開発したとして、投資銀行業務の担当者が企業のM&A部門の担当者とパワーランチの真っ最中だ。

さてアマゾンゴーを出たクリエイターは、すぐにライドシェア会社の「Lyft」が提供する自動運転タクシーに乗り込んだ。2020年のオリンピックを契機に特定地域で自動運転が解禁された日本でもようやく自動運転がタクシーに限り認められるようになっていて、キャッシュレス化の進展でますます便利に利用できるようになっていた。楽天が出資、提携している「Lyft」の支払いには、楽天ペイを利用した。向かったのはソフトバンクグループのビジョンファンドが出資するコワーキングスペース&シャアリングオフィスの「WE WORK」(ウィワーク)だ。

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