ここのオープンスペースで買ってきたサンドイッチで腹を満たしたクリエイターは、その場で30分ほど仕事の打合せを行った。その後、「クリエイターのためのマーケティング講座」を受講したが、この受講料はPayPayで決済された。これを確認しようとスマホでPayPayの入出金明細のページを開くと、同時に納品した広告企画の代金がPayPayに入金され、さらに今月の家賃が独自通貨「ペイペイコイン」で自動引き落としされていた。
仕事から日常生活までキャッシュレスが浸透し、すでにクリエイターの生活はそれなしには成り立たなくなっていた。
アマゾン銀行が世界を飲み込む
上記は、筆者が世界のメガテック企業や金融セクターのプレイヤーを対象に取材し、独自の分析に基づいて行った近未来シミュレーションである。
すでにこうした世界は想像するに難くなく、納得する読者も多いことだろう。一方でこれはどちらかと言えば日本にとって楽観的なシミュレーションでもある。これからの動向次第では米中の金融ディスラプター(破壊者)の日本上陸によって日本の金融産業は、さらに過酷な状況に陥ることも考えられるからだ。
そんな日本の既存金融界を破壊しかねないプレイヤーの筆頭がアマゾンである。
筆者は読者諸兄姉に「アマゾンは何の会社だったのか」と尋ねてみたい。こう問われて、アマゾンを「金融の会社」と答える方はほとんどいないだろう。しかし「アマゾンは世界一のオンライン書店である」という答えももはや十分な回答にはなっていない。いまやアマゾンは本のみならず、生活用品や家電、生鮮食品、デジタルコンテンツなどのあらゆるものを販売する「エブリシング・ストア」となっている。それどころか、クラウドサービスや音声AI、はては宇宙事業に至るまで、ありとあらゆる事業を展開する「エブリシング・カンパニー」へと成長を続けている。
すべての買い物はアマゾン1社で完結し、日常生活の経済活動を包み込む「アマゾン経済圏」がすでに誕生しているのだ。考えてもみれば、経済圏の根幹を支える金融が、アマゾンのビジネスの一部として存在しないはずがないのである。
銀行の3大業務は「預金」「貸出」「為替(決済)」である。この3つはすでにアマゾンのビジネスの中に存在していることをご存知だろうか。