銀行がなくても資金調達が可能
分かりやすいのは「為替(決済)」だろう。EC・小売りからスタートしたアマゾンは常に決済の利便性向上にこだわってきた。それがテクノロジーと結びつくことで「アマゾンペイ」が完成、ひいては無人レジコンビニ、アマゾンゴーを完成させたのだ。創業者のジェフ・ベゾスはおそらくアマゾン創業前から「決済を意識させない」というカスタマーエクスペリエンスの実現を目指していたはずだ。そのこだわりは今や汎用AIを使ったスマートエコーのアマゾン・アレクサによる「音声決済」、そして「顔認証決済」に行きついている。

では「貸出」ではどうだろう。アマゾンの消費者にすぎない読者にはなじみがないかもしれないが、アマゾンにはその経済圏で販売を行う事業者向けに「アマゾンレンディング」という貸付サービスが存在している。彼らの言葉を引用すれば、「法人の販売事業者のさらなるビジネス拡大を支援する短期運転資金型ローン」となる。
オンライン手続きで最短5営業日で融資が完了するので、タイムリーな資金調達が可能。最大5000万円まで融資してもらえるから、事業者の急な資金需要を豊富に満たしてくれる。しかも売上が決済されるアマゾンのアカウントから毎月自動で引き落としされるから、かんたん便利。アマゾン経済圏で起業したくなる事業者も多いだろう。
アマゾンがこの審査に利用しているのは、当然ながら事業者データとビッグデータである。それは商流、物流、金流をつぶさに把握できるアマゾン経済圏の強みがふんだんに生かされている。過去の販売実績や決済データなどを基に審査するわけだが、裏を返せば、事業者の商品販売状況も、在庫状況もアマゾンは手に取るようにわかるのである。
先行き不透明な世界と知りながらも「事業計画」を作らせて、さらに限界に達している担保主義に基づいて不動産担保データに目を通す。こんな既存金融機関にとって、脅威の「貸出」機能をすでにアマゾンは確立しているのだ。
最後に「預金」を見て行こう。