2019.05.20
# 中国

日本人も驚愕する中国「996勤務=朝9時~夜9時×週6日」その実際

どこかでも見たIT産業のモーレツ文化
北村 豊 プロフィール

経営者は歯牙にもかけず

「966.ICU」プロジェクトに投稿された記事によれば、中国のウエブサイト運営企業「58同城」が従業員全員に対して「996」勤務体制を実施し、休日出勤の賃金も支払わない旨を申し渡したとの報道が2016年9月以降繰り返された。

また、浙江省杭州市を本拠とする電子商取引企業「有賛」は2019年1月の年次総会で、最高経営責任者(CEO)が来年度に996勤務制度を導入すると言明し、労働法違反の容疑で当局の捜査を受けた。

さらに、2019年3月中旬から、電子商取引大手第2位の「京東商城(JD)」は部門別に996または995勤務体制を実施し始めたという。<注:「995」は午前9時から午後9時までの12時間労働で週5日勤務>

上述した「996.ICU」プロジェクトが実施した投票で選ばれたブラック企業の上位には、電子商取引最大手の「阿里巴巴集団(アリババ集団)」や第2位の「京東商城」などが含まれていた。

アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)は4月14日に、996勤務体制を擁護し、ソーシャルメディアの“微博(Weibo)”に次のような内容の投稿を行った。

「懸命に働いた見返りが得られるし、自分の好きなことが見つかれば、996は何も問題ではない。アリババに入社を希望する人は成功を望むなら996で12時間働く覚悟が必要である」と述べて、996を容認する姿勢を示したのであった。

この馬雲の投稿に対しては多くのネットユーザーから企業経営者として身勝手な考え方であると多数の反論が寄せられたし、中国共産党中央委員会の機関紙である「人民日報」も4月14日付の論説で、「996を擁護することは、企業経営者の驕りを反映しているばかりか、不当であると同時に非現実的である」と指摘して馬雲の発言を批判した。

 

アリババで996の10年間

その馬雲が経営するアリババ集団で10年間勤務した後に辞めさせられた元従業員がアリババを訴えたという記事をネットメディアの「三言財経」は5月6日付で報じた。

1.最近、“董徳生”という名のネットユーザーが中国のQ&Aサイトである“知乎”上に『アリババでの10年、996は一体何だったのか』、『アリババでの10年、996でなぜ離職させられたのか』、『アリババでの10年、996でどうして離職証明を受け取れないのか』という3編の文章を投稿した。その中で董徳生は、自分は年齢が比較的高く、学習能力がついて行けない恐れがあるという理由でアリババを辞めさせられたと述べていた。
2.董徳生によれば、彼はアリババで10年間勤務したが、996は日常茶飯事であり、8117さえもしばしばであった。しかし、強制的に離職させられた現在では、アリババは離職の補償金を提供しないばかりか、離職証明も発行してくれない。
3.董徳生は“知乎”に投稿した文章の中に自分とアリババ集団が締結した労働契約書の写真を掲載したが、それはアリババ集団と彼が2017年1月20日に調印した「期間の定めのない労働契約書」であり、有効期限には「関係法令法規が認める終了規定が出現する時まで」との記述がなされていた。
4.董徳生によれば、2017年5月にアリババは一部のそこそこの年齢に達した職員を選別して排除することを目的とした“汰換計画(古いものを新しいものに入れ替える計画)”を策定した。董徳生はすでに37歳で、年齢が比較的高く、上司から学習能力が追い付かない恐れがあると判定されて淘汰されたのだった。
5.離職後に董徳生はアリババの関係部門と何度も交渉したが、アリババからは離職証明書の発行を受けていない。2018年5月28日付で裁判所の仲裁裁定が下り、裁判所はアリババに対し董徳生に離職証明書を発行するよう命令したが、アリババはこれに従わず、すでに1年が経過した今日まで離職証明書はアリババから発行されていない。

董徳生はアリババで勤務した10年間に996および8117という過酷な日々を過ごし、アリババの発展に寄与したというのに、37歳という中年になったら、新しい技術の習得が困難と判断されて解雇され、離職の保証金を支給しないばかりか、離職証明書も発行しないのはどういうことかと問題を提起しているのである。

董徳生は、アリババで996および8117という苛酷の日々を過ごしたと、自身の労働履歴を過大評価しているようだが、アリババにとって董徳生は使い捨ての駒に過ぎないというのが実情であり、それこそがアリババが企業として大成功を果たした理由だと言えるのはないだろうか。

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