故・萩原健一さんが自らの言葉で明かした「ショーケン」という生き方

「病を公表する気はまったくなかった」

3月末に68歳でジスト(消化管間質腫瘍)により亡くなった萩原健一さん。

ショーケンの愛称で親しまれ、俳優として歌手として50年以上活躍した萩原さんは、人生で残された時間を意識したときから、手記として自分の真実を残そうとしていた。

 

〈自分のことを記したこの本は、私にとって最後の著書になる。

自分の言葉で真実を語ろう〉

この2行で始まる『ショーケン 最終章』(講談社)から見えてくる「ショーケンという生き方」。

現場ではつねに真剣勝負

〈刀は使わなくても、錆びないように日々打粉で手入れして、たまには試し斬りもしておくことだ。でなければ、いざというときに使いものにならない。それと同様、俳優もいついかなる状況でも真剣勝負ができるように準備しておく必要がある〉

ドラマ・映画の現場では、いつも真剣勝負が当たり前。そうした心構えは、黒澤明、神代辰巳、山下耕作といった名監督、市川森一、倉本聰といった名脚本家との切磋琢磨から身につけていったものだった。

〈私たちの仕事は一度終わってしまえば、次の予約がない。だからその時その時に精一杯がんばるしかない。私に関して言えば、全力を出してやることがいちばん心地良く、疲れない方法でもある〉

彼は、なぜいつも真剣勝負だったのか。その「仕事観」が出ているのが上の言葉ではないだろうか。真剣勝負から生まれる緊張感溢れる現場から優れた作品が生み出される。これこそが萩原さんの愛したものだった。

NHK大河ドラマ『いだてん』の高橋是清役の衣装で(2018年10月撮影)

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