少なくとも日本が戦争に負けた70年ほど前から、株価と不動産価格はおおむね連動してきたことは否定できない事実である。
巷で良く言われるように、株価の先行性(例えば株価が暴落してから不動産価格が下がるまでには半年ほどのタイムラグがあるなど……)はあるように見える。
確かに、市場が整備され売買の活発な株式市場の方が、取引にローン設定や登記などの煩雑な手続きが必要な不動産よりも、社会や経済の変化に素早く反応して価格が変動するということはありそうだ。
ただ、いつも半年先に動くとかいうような明確な指標というものは無いのではないかと思う。しかし、不動産投資家が株式市場の動向に注視しているのは事実だし、株式投資家を兼ねていることも多いから、株式市場の動向は無視できない。
だが、令和時代に入って、この株価と不動産価格の連動性というものはかなり薄れてきているように思う。
不動産価格の下落は構造的問題
まず、これから予想される不動産価格の下落は、景気変動などの社会・経済のサイクルとは無関係に「需給バランス」のゆがみで生じる。
敗戦後、土地は必ず上がるという「土地神話」が生まれたのは、「一国一城の主になってマイホームを持ちたい」という個人や「高度成長に乗ってどんどん発展する」企業の土地需要に対して、供給が追い付かなかったからである。さらに、容積率をはじめとする建築制限などが、供給不足に追い打ちをかけた。
しかし、敗戦以来続いてきたこの「需要過剰」の流れは、1990年頃のバブル崩壊で終わり、リーマンショックでとどめを刺された。そして令和時代に入り、完全に逆回転を始めている。
詳細は、2018年9月17日の当サイト記事、「一般投資家はこの先、日本の不動産には手を出してはいけない」で述べたが、きわめてシンプルに表現すれば、「1人っ子同士が結婚して、どちらの親もマイホームを持っていたら、自宅が1つ余る」ということである。