2019.06.25
# 宇宙科学

コスト競争時代に突入した「宇宙ロケットビジネス」のこれから

ホリエモンロケットの勝算は…?
夫馬 賢治 プロフィール

ロケット運送事業でリードする「スペースX」

冒頭で紹介したロケット事業者たちも、当然それぞれ戦略を定め事業を進めている。今や知名度バツグンのスペースXは、2002年に創業した。

通信衛星を60基も載せた「ファルコン9」

低軌道(高度2,000km以下の地球周回軌道。国際宇宙ステーションなどはこの軌道に存在する)に衛星を飛ばすために最適化し、徹底的にコストを切り詰めた「ファルコン1」は2008年に初の打ち上げに成功した。

ロケットビジネスでは積荷の積載量のことを「ペイロード」と呼ぶが、ファルコン1のペイロードは670kg。堀江貴文氏が出資するインターステラテクノロジズの「MOMO3号機」のペイロードが20kgなのに比べると、約38倍の積荷が運べ、大型ロケットに位置づけられる。

コスト面でもファルコン1は抜群に強かった。「MOMO3号機」の打ち上げコストが1億円を超えると言われる中、ファルコン1の打ち上げ費用は670万米ドル(約7.4億円)。

ファルコン1の方が7倍高いが、ペイロード1kg当たりに換算すると、MOMO3号機が1kg当たり500万円と比較的安価に抑えられている中、ファルコン1は1kg当たり1万米ドル(約110万円)と破格の価格だ。

ファルコン1のコスト削減の秘訣は、第1段ロケットをパラシュートを使って海上で回収し、再利用できるようにしたことにある。ロケットの世界でも、リサイクルや再利用がコスト削減に貢献している。

さらにスペースXが2010年から打ち上げている第2世代型の「ファルコン9」は、ペイロードが22,800kgでファルコン1の34 倍という超大型ロケットだ。それなのに打ち上げコストを6,200万米ドル(約68億円)に抑えている。1kg当たりのコストでは、2,700米ドル(約30万円)と驚異的なコスト競争力を誇る。

さらにスペースXは2018年2月、そのファルコン9を3機束ねて統合させた「ファルコンヘビー」の打ち上げにも成功した。ファルコンヘビーの第1段ロケットは、ロケットを逆噴射して地上に戻ってくるSFさながらの機能を備えていることでも有名だ。

ペイロードは63,800kgという超重量級でありながらも、打ち上げ費用はファルコン9の1.4倍強の9,000万米ドル(約99億円)にまで抑えることができ、1kg当たりのコストは1,400米ドル(約15.4万円)にまで下げることを可能にした。

また超大型ロケットのため、理論上、火星にもペイロードを届けることができるという。

ファルコンヘビーは2019年4月に、初の商業飛行にも成功。サウジアラビアの通信衛星「アラブサット6A」を低軌道よりも距離が離れている静止軌道(自身の公転周期=母性の自転周期で、赤道上の高度35,786キロメートルの円軌道。見かけ上は赤道上に静止する)と同期した軌道上に乗せた。

そして、同5月23日には、同社最大のペイロードとなるインターネット通信衛星60基を載せたファルコン9の打ち上げにも成功した。スペースXは今後も毎年1,000基から2,000基の衛星を打ち上げ、最終的には12,000基からなるインターネット通信網を築く「スターリンク計画」を描いている。

Amazon創業者の壮大な計画

ロケット・ビジネスと言えば、アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏の率いるブルーオリジンの名前を聞いたことがある人もいるだろう。

ブルーオリジンの事業戦略は、他社と一線を画しており、最初から「ヒト」を運ぶ有人宇宙飛行を狙っている。設立は2000年とスペースX社よりも2年早い。今や5拠点、従業員2,000人規模の大企業となり、ベゾス氏が年間10億ドルもの投資を行い、潤沢な予算によってその勢いは止まるところを知らない。

ブルーオリジンは、準軌道(宇宙空間に到達し無重力を体験することもでき、円周軌道に乗らずに地表に戻ってくる軌道)行きの短距離ロケット「ニューシェパード」と、長距離用の大型ロケット「ニューグレン」の2種類を、同時並行で開発中だ。ニューシェパードはすでに何度も打ち上げを成功させており、今後ニューグレンの打ち上げにも期待が集まっている。

また、ジェフ・ベゾス氏は2019年5月9日、ワシントンで開かれたイベントで、新たに無人月着陸船「ブルームーン」の実物大モデルを発表した。ブルームーンは2階立てで、小型探査車を最大4機まで積み、月軌道への衛星の発射が可能となる。さらに2024年までに月への有人飛行を実現させると発表した。

宇宙大国のアメリカでは、マイク・ペンス副大統領がNASAに対し、今後5年以内に月軌道に宇宙ステーションを設立し、アメリカ人宇宙飛行士を再び月に着陸させることを要請しているが、ジェフ・ベゾス氏は「我々は3年前からその準備をしている」と、NASAを追い越す勢いだ。

同じ会場でベゾス氏は、将来的にスペース・コロニーの実現も目指すとも息巻いた。オニール・コロニーと呼ばれる技術では、相互に逆回転する2つのシリンダーが人工重力を生み出し、人類の居住、植生が可能になるという。ベゾス氏は2年前にアマゾン株を売却した10億ドル以上の資金を、2020年からついに有人飛行テストに投下する計画だ。

有人飛行では、スペースXも負けていない。ZOZOの前澤友作社長が搭乗予約したことで話題となった有人旅行宇宙船「スターシップ」は、かつてのスペースシャトルのように、何度でも再利用できるロケットだ。

2019年4月3日にテスト用の「スターホッパー」が約1分間のテスト飛行に成功。今年中に高度飛行や高速飛行のテストを繰り返し、実現への駒をさらに進める予定。マスク氏は、完成形の「スターシップ」で、月や火星に人を送ることを目標としている。

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