代沢、等々力、成城、瀬田、深沢――。世田谷には、名立たる高級住宅地が多い。まさに、豪邸の密集地帯だ。その中でも、ひときわ目立つ大邸宅にはどんな人が住んでいるのか。話を聞いてみた。
大工への祝儀に100万円
日本有数のセレブタウン、東京・世田谷。東京23区内で2番目に面積が広いこのエリアには、成城や等々力などの高級住宅街が広がっている。
「世田谷ブランド」という言葉があるほど、世田谷区の中に住むこと自体がステータスだと感じる人は多い。
また、政財界の大物や有名芸能人が大豪邸を構える土地としても有名だ。ハズキルーペ会長・松村謙三、政治家・小沢一郎、芸人・ビートたけし……。
名前を挙げればきりがないが、彼らが住人であることが「世田谷ブランド」に一役買っていることは間違いない。
だが、著名人でなくとも、数億円はくだらない一軒家に住む人も少なからずいる。しかも、高級住宅街の中でもひときわ目立つ大豪邸だ。いわば、都心のど真ん中に「ドカンと一軒家」である。
どのようにして、彼らは世田谷の大豪邸に住めるようになったのか――。
劇場やライブハウスなどが立ち並び、「サブカルチャーの聖地」として若者たちで賑わう下北沢。しかし、駅から5分も歩けば、閑静な高級住宅街・代沢に入る。
かつては竹下登や佐藤栄作など、大物政治家が住んでいたこのエリアには、いまでも数々の富裕層が暮らしている。
この一角に、まるで「要塞」のように巨大で堂々とした佇まいの邸宅があった。通常の家の1階に当たる部分が、高さ3mほどのコンクリートの土台となっていて、その上に2階建ての家がある格好だ。
そのため、通行人は絶対に中を覗くことができない。土地の広さは庭と合わせて約140坪もある。
「家を建てるのに、土地代を含めると6億円以上はかかったはずです。上棟式(新築の際に行われる祭祀)で大工さんたちに配ったご祝儀だけでも100万円以上は使いました」
こう笑って話すのは家主の山崎篤史さん(仮名・70歳)。昨年の7月に完成したというこの新居で妻と暮らしている。
山崎さんがこの大邸宅に住むまでには、紆余曲折があった。
「学生のときから英語を使う仕事がしたくて、大学卒業後は航空会社かホテルに就職しようと思っていました。でも、航空会社は面接で落ちてしまい、都内の5つ星ホテルに就職。
いま思えば、あのとき航空会社に就職していたら、いまのような生活はできませんでした」