2019.06.20
# 日本株

ヤフーに電通、あなたの会社も? 増加する「持ち株会社」の功罪を問う

想像以上にドライなその実情
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

大企業でも「資本金1億円以下」とは?

節税メリットを得るために持ち株会社を使う企業も多い。日本では資本金1億円以下の企業は、外形標準課税(赤字企業でも、資本金に対して課税される法人税)の対象外となる。持ち株会社への移行に乗じて新会社の資本金を1億円にする企業が増えた。

広告大手のアサツー・ディー・ケイも今年1月に持ち株会社「ADKホールディングス」に商号変更し再上場を目指しているが、資本金は1億円だ。2018年にベインキャピタルに買われて上場廃止になったとは言え、国内4位の広告代理店大手で2000人以上のグループ社員を抱える企業としては、1億円という資本金額は極めて小さい。

こうした例は他の多くの有名企業にも見られる。今や大企業が持ち株会社を作り、こぞって「中小企業」になろうとする奇妙な現象が進行中なのである。

 

また経営者にとっては、人事政策の上でも持ち株会社の方が融通が利く。同じ会社で同年代の従業員の給与や待遇に大きな差をつけることは士気の点からやりにくいが、別会社なら全く異なる人事体系を会社ごとに導入しやすい。同様にリストラも、同じ会社内の決定として行うと人間関係がギクシャクしてくるが、親会社の命令という形を取れば「仕方がない」と相対的に通りやすくなる。

こうして見ていくと持ち株会社という名のドライな「ファミリー」の姿が浮き彫りになる。自立して一家に貢献できない子は、親から見捨てられることも覚悟しなくてはならないのだ。

コングロマリット(独占企業)復活の世界的流れ

しかし、持ち株会社の増加と、80年代以降の資本自由化や国際競争の中でのコングロマリットの復活の流れを切り離すことは難しいだろう。持ち株会社はトラスト(独占企業結合)の歴史に結びつく。

米国では20世紀初頭の電力事業の寡占化が、持ち株会社の原型として知られる。その中心となったのが発明王トーマス・エジソンの個人秘書から電力業界のドンに這い上がったサミュエル・インサルという人物だ。

トーマス・エジソン Photo by GettyImages

インサルはシカゴの電力会社、コモンウェルズ・エジソンの雇われ社長だったが、独創的で極めて有能だった。今日世界で一般化している電力会社の従量課金制は、もともと彼のアイディアだ。エジソンが発明した直流(DC)とウェスチングハウスの交流(AC)の「電流戦争」と呼ばれた技術競争でACの優位性が明らかになると、元ボスの顔を立てることなく自社事業をさっさとACに切り替える冷徹さも持っていた。

1920年代にはインサルの会社は、持ち株会社の傘下に32州の電力会社や鉄道、ラジオ放送局など4000以上の企業を連ねる一大コングロマリットと化していた。持ち株会社の仕組みは「規模の論理」によってコストを下げ、価格競争力を得るために活用されただけではなく、法の規制をくぐり抜けるためにも利用された。

例えば、発電子会社は公益企業として個別の州法で規制され、ユーザーに請求出来る電力料金には上限があった。しかし持ち株会社の方は規制を受けていなかったので、自らの利益を上乗せして水増しした料金をユーザーに請求したのだ。さらに発電、配電、小売などの各段階での内部取引で親会社が価格を支配し、子会社の利益を吸い上げることも容易だった。

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