低迷の原因を図で示そう
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が5月28日発表した世界競争力ランキング2019によると、日本は前年の25位から30位に後退し、過去最低のランクとなった。
こういう話を聞いても、最近は全く驚かない。国民1人あたりGDP(国ごとの価格差調整済み)では、1999年にはすでに世界30位に落ちていて、その後20年間30位前後を低迷しているのだ(世界銀行『世界開発指標』)。生活に対する主観的な満足度でも、日本はOECD36か国中27位である(OECD『より良い暮らし指標』)。
むろん、世界競争力ランキングではどのような要素を組み込むかによってランクは変わってくる。GDPも国民の生活水準を正確に反映しているわけではない。しかし、経済の効率性や国民の生活水準でみて、日本が先進国の中で下位に停滞しているのは間違いない。
経済力の衰退は、社会に様々な悪影響をもたらしている。例えば、長時間労働をする労働者の割合はOECD36か国中4番目に多く、ワークライフ・バランスの点からも日本は先進国とは言えない状況だ。年金だけでは老後を暮らしていけないことも話題になっている。
もし、経済活動がもっと効率的で生産的であれば、それほど長く働く必要もないし、老後を支えるだけの社会保障も整備できる。例えば、1990年代以降も平均的なOECD諸国並みに経済が成長してさえいれば、今の我々の所得は現状の約3割増しとなっていた。そうすれば、今日の経済問題はかなりの程度軽減されていただろう。
これほどまでに日本経済が低迷している1つの要因は、経済活動も人も内向きであることだ。
図1は、特許データを利用して、世界各国の企業の共同研究ネットワークを図示したものだ。各企業が国ごとに色分けされた点で表され、共同研究をしている企業が線で結ばれている。また、共同研究を行う企業同士は互いにひきつけあうように描かれているため、直接間接に共同研究関係でつながっている企業群はクラスター(固まり)を形成する。

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この図で特徴的なのは、欧米と中国が1つの大きなクラスターを形成しているが、日本企業はそこから少し離れたところで固まっていることだ。つまり、米欧中は互いに活発に国際共同研究をしているのにくらべ、日本企業は他国とのつながりが少ない。