2019.06.26
# 中国

残酷すぎる…中国で宅配便配達員の女性を襲った「恐ろしき実態」

モンスター顧客がここまで踏みにじる

宅配便配達員は門前で嗚咽する

2019年6月10日の夜7時50分、山東省北部に位置し渤海湾に面した東営市に属する広饒県(こうじょうけん)の公安機関が、県内の稲庄鎮広小張村の張姓の男(以下「張某」)から「騒ぎを起こしている人がいる」との通報を受けた。

通報を受けた公安機関は最寄りの稲庄派出所に出動を命じ、警官の王海港が広小張村の現場へ駆け付けた。王海港がそこで目撃したのは、通報を行った張某の家の門前で宅配便配達員の女性が嗚咽する姿だった。

不審に思った王海港が女性に事情を尋ねると、女性は圓通速逓公司(以下「圓通速逓」)の聶桂英(じょうけいえい)<48歳>であると名乗り、彼女が張某の家に出向いた目的とその後の顛末を涙ながらに詳述した。

これを聞いて聶桂英に同情した王海港は、聶桂英に対して今回の事態を証明する文書を早急に作成して圓通速逓宛に提出することを約束すると同時に、彼女に自分の尊厳を捨てることなく速やかに現場から退去するよう命じたのだった。

翌6月11日付で王海港が広饒県公安局稲庄派出所の公式書類として作成した証明書の全文は以下の通り。当該証明はメディアに公表されたようだが、本件の概要を要領よく取りまとめている。

 
証 明
圓通速逓公司

2019年6月10日夜8時頃、公安機関は広饒県稲庄鎮広小張村の張某から騒動を起こしている人がいるとの通報を受けた。現場へ到着した警官が調べたところ、次のような事態が判明した。

(1)少し前に張某の母親がネットのキャンペーンに応募して当選し、賞品として箱入りのベトナムから輸入したマンゴ4個を贈られた。5月某日に賞品のマンゴが入った箱は圓通速逓の配達員である聶桂英(女、48歳)によって張某の家に届けられたが、受領した箱は包装テープが切断されていて、4個あるはずのマンゴは3個しか入っていなかった。このため、張某は圓通速逓にマンゴ1個が不足していたと苦情を入れ、同社の宅配便の荷物は2度と受け取らないと表明した。このままでは自分の業務成績に影響が出ると考えた聶桂英は、張某に連絡を取って同意を得た上で、マンゴ1箱を自腹で購入してお詫びの印として圓通速逓ではなく、郵便速達を使って張某宛に送付した。
(2)張某は聶桂英が送ったマンゴ1箱を受け取ったにもかかわらず、その後も圓通速逓に対し聶桂英に関する苦情を前後4回にわたって申し立てた。張某の申し立てを受けた圓通速逓は、社内規定に基づき聶桂英の給与から2000元(約3万2000円)を罰金として差し引いた。
(3)6月10日当日の夜、聶桂英は電動バイクに乗って張某の家に出向き、再度張某が圓通速逓に苦情を申し立てると、彼女は会社を解雇されると告げて改めて許しを乞い、最後には張某とその家族に土下座までして謝罪した。<これは警官が現場に到着する前の状況>
(4)これに対し、張某は圓通速逓に電話を入れて、聶桂英が当夜張某の家に来て騒ぎを起こしていると伝え、圓通速逓に聶桂英へ電話して張某の家から離れるように命じるように要求した。その上で、張某は110番に電話を入れて聶桂英を自宅から退去させるように依頼した。警官が現場へ到着した時には、聶桂英は張某の家の門前でむせび泣いていた。
警官は聶桂英に対し自分の尊厳を捨ててまで許しを乞う必要はないと告げて、公安警察がこの状況について証明を行う旨を約束した。警官が身体を支えながら現場から退去する時に、聶桂英が最も心配していたのは、公安警察が証明書を発行することによって、張某がさらに怒りを増幅させて苦情申し立てを継続することだった。
この事件に関する証明を文書で与えると同時、貴社に対し以下を提案する。
1.社員の尊厳を犠牲と引き換えにいわゆる悪意の苦情に対して許しを乞うことは全く不必要であると提案する。問題の張某とその家族は貴社のブラックリストに永久登録すべきである。
2.悪意の苦情申し立てにより給与から差し引かれた2000元は聶桂英に返還すべきである。
3.個人の尊厳を犠牲にしてまで会社の名声を守ろうとした優秀な職員である聶桂英に対しては、職員の手本として表彰と褒章を行い、そうした職員の養成に注力すべきである。成語に“以徳報怨(徳を持って恨みに報いる)”というのがあるが、それなら何をもって徳に報いるのか。社会の公平と正義を擁護し、社会のプラスエネルギーを増大させることは我々の共同責任である。
            警察官署名:王海港
                        広饒県公安局稲庄派出所
                           2019年6月11日
                   (広饒県公安局稲庄派出所の印影)

メディアが報じたところによれば、聶桂英が張某の家へマンゴの箱を届けた際に、箱の包装テープが切断されていたので、張某は聶桂英の目の前で箱を開け、マンゴが1個不足していることを確認した上で、圓通速逓の誰かが食べたと疑い、圓通速逓へ苦情を申し入れたのだという。

また、聶桂英は1箱52元(約850円)のマンゴを購入して張某宛に送ったが、送付されたマンゴが本来のベトナム産ではないことに不満を示したという。

6月11日の午後3時15分、圓通速逓は“微博(マイクロブログ)”の公式アカウントを通じて、配達先からの苦情により惹起された宅配便配達員の聶桂英に対する罰金はすでに撤回され、聶桂英に対し慰問を行っていると述べると同時に、事実関係を確認した後に、悪意の苦情申立者を“不受歓迎客戸名単(ブラックリスト)”に掲載する権利を保留すると発表したのだった。

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