中高生が「避妊失敗した…」緊急避妊薬オンライン処方して見えたこと

もっと制度を使いやすくする必要がある
山本 佳奈 プロフィール

だが、学会などから選ばれた検討会の委員らは、「欧米より性教育が進んでいない」「薬局で薬剤師が説明するのは困難だ」「安易な使用が広がってしまう」といった不明瞭な理由から薬局販売が見送られた。

ところが検討会の後、厚労省がパブリックコメントを募集したところ、なんと市販化への賛成意見が320件集まり、反対意見はわずか28件に止まった。賛成意見が大多数を占めているが、その声を無視するかのように市販化は見送られたままの状態だ。

 

大型連休では半数がオンライン処方

では、緊急避妊薬の処方の現場はどうなっているのだろう。やや専門的になるが、私が勤務しているナビタスクリニック新宿では、国内で承認されているノルレボと、海外から輸入しているエラと、中用量ピルであるプラノバールの3種類を、緊急避妊薬を必要とする女性に処方している。

確認したところ、2016年4月1日の開業以降、3年2ヵ月という期間でのべ1400人を超える女性に処方している。曜日ごとの緊急避妊薬の処方数を確認したところ、日曜日が最も多い294件であり、ついで月曜日の250件、水曜日の210件と続いていた。

緊急避妊薬は、性交渉後3日以内、ないしは5日以内に内服しないと効果が期待できない。たとえば週末に性交渉をしたとして、日曜日に緊急避妊薬にたどり着く手段がなければ、平日働く女性にとっては緊急避妊薬を手に入れることが難しい現状があると言えそうだ。

さて、当院では、緊急避妊薬をオンライン診療によって処方することを、昨年9月から開始した。

大きな流れとして、厚生労働省は、情報通信機器を用いた診療は医師不足の地域に対する対処や働き方改革への対応に有用であるとの立場から、オンライン診療を推進している。その一環として昨年4月から、オンライン診療の保険適応が開始されていた。

さらに、厚労省が出している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(厚労省)の中に「医薬品の投与を速やかに行わなければ患者の生命・身体に危険が及ぶ可能性が高く、対面での診療を待つことが望ましくない場合には、医師の判断の下、オンライン診療に基づき医薬品を処方することが許容され得る」という文言があり、緊急避妊薬はこの条件に合致するため、オンライン診療に基づき処方することが許容され得る、と当院では判断している(当初、厚労省はこれをルール違反としていた)。

オンライン処方への需要が高まっていることは間違いない。最大10連休となった今年の大型連休、ナビタスクリニック新宿は全日診療していた。10連休中に計32件の緊急避妊薬の処方があったのだが、処方した緊急避妊薬の約半数は、オンライン診療による処方だった。もちろん連休という要因は関わっているが、オンライン処方への需要は高まっていると言えそうだ。

オンラインによる処方を希望する理由を聞くと、旅先や帰省中に避妊に失敗した近くのクリニックが閉まっていて受診できない、といった声が多く聞かれる。

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