世界的に犯罪が少ない日本の知られざる「更生保護のリアル」

やり直しのできる社会を目指して
廣末 登 プロフィール

外国の研究者が説明する、日本の犯罪が少ない理由

国別犯罪率の違いを説明すべく、オーストラリアの社会学者・ジョン・ブレスウエイトは、シエイミング(恥付け)という概念を著した(1989年)。

ブレスウエイトが主張するシエイミングには二種類あり、ひとつは「再統合的シエイミング」である。これは、ある人が罪を犯した場合、コミュニティの成員は、その行為を非難するものの、犯罪行為者が自らの行為について謝罪し、償いをすれば、コミュニティはその犯罪者を許し、コミュニティから追放することはせずに、再統合して受け入れる。

いまひとつのシエイミングは、ある人が罪を犯した場合、コミュニティは犯罪者に逸脱者のラベルを貼り、コミュニティから追放してしまう方法であり「排斥的シエイミング」である。

前者「再統合シエイミング」は、犯罪者に更生の機会を与え「生きなおし」を認めることで、犯罪行動の抑止効果があるが、後者「排斥的シエイミング」は、犯罪者を孤立させ、より逸脱的にするものである。

 

ブレスウエイトは、日本は再統合的シエイミングを行っているとみる。なぜなら、第二次大戦後の諸外国で犯罪発生率が増加傾向にある中で、日本のみ減少傾向にあることを指摘し、これは日本が再統合的シエイミングを行っているからだと評している。

ブレスウエイトによると、人間は恥をかかせられる体験や、非行・犯罪的サブカルチャーとの接触を通して、好ましい行動、好ましくない行動を学習する。犯罪・非行を犯す人たちは、好機に恵まれず、生活(向上)のチャンスが制限されており、逸脱的なサブカルチャーに馴染んでいる。したがって、慣習的な社会での好ましい行動、好ましくない行動の学習がなされていない。

排斥的シエイミングの立場では、社会から犯罪者というラベルを貼られると、コミュニティに居場所が無くなり、再犯という負の連鎖を生む。なぜなら、人間は社会的動物であるから、排斥された犯罪者は、他者からの支持や肯定的反応を得るために、社会から排斥された者同士からなる、非合法色の濃い逸脱的サブカルチャーに接近し、犯罪的な学習を行う傾向がある(参考:『福岡大学人文論叢』46巻第2号 平兮元章 2014年)。

類は友を呼び、朱に交われば赤くなるのである。

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