お前だけ頭良くなって俺を捨てる気か?
その後1年くらい経った頃、彼が犬の散歩にいっているときに幼馴染からがメールが来ているのをひとりで読むことができた。今までは彼が気に入らない内容だと、私より先に読んで消してしまうか、彼の言う通りの返信をするように指示されていたのだ。
「いったいいつまでそんなバカなことしているの?いい加減出てきなさい!あんたの為なら何でも助けるから、早く連絡して!」
彼はあと30分は帰ってこない。急いで親友に電話をした。
4年間軟禁状態だということ、もし私が出ても行く場所が無いこと、仕事も何も無いから不安で動けないこと、ネガティブで消極的な私の話に親友は驚き呆れ、「任せて。絶対になんとかする」と言ってくれた。
それを励みに、私も自活できるように何かしなければと思った。ここまで失ったのだから、もう失うものもないし、自分が生きていても良い理由になる事を見つけようとした。
そうしてまずは彼のもとでも出来ることを、と、介護事務の資格を取るために、キャッシングでお金を借りて独学で勉強を始めた。

勉強をしている私を見て彼は激怒した。
「なんでこんな事してるんだ?!お前だけ頭良くなって俺を捨てる気か?!」
彼は家をひっくり返す勢いで暴れ、恐怖にすくみ上りそうになった。ぐしゃぐしゃになった家の中で、彼の家族や、私達の将来役に立つためにやっているだけだと何日も説得し、なだめて何とか許して貰う。それでも彼は勉強する私をすごく嫌った。
でも、やっと目標ができた私は、息を吹き返したかのように気力が湧いてきた。嫌われても、嫌がられても勉強はやめなかった。そこから勉強を続け介護事務の資格を取ることができたのだ。しかし、最終目標のホームヘルパー2級の資格を取得するためには、学校に通う必要があった。
彼の言うことに逆らうようになり、喧嘩をするようになったけれど、目標と、少しの自信のおかげで、「ひるむことなく喧嘩ができるようになった」のは大きな前進だった。