軟禁からの脱出

親友に資格が取れたことを報告すると、仕事を見つけよう、友人の家の空き部屋にしばらく間借りさせて貰えるようにしたよと連絡があり、もう今しかない、と決意した。

週3回、宅配業者の集荷が来ていた。いつも泣いている私を見ては心配してくれていた宅配のお兄さんにお願いをした。

「明日、夕方に私が電話したら、お願いだからすぐに来てもらえますか?!」

お兄さんも只事ではないと感じたのか、了承してくれた。

次の日、彼が犬の散歩に出た瞬間に宅配のお兄さんに電話をし、大きなダンボール3箱に入れられるだけの服と荷物を入れて、とりあえず実家に送った。本当は私も荷物に入りたかったが、突然私が消えたら、彼が逆上して殺しに来るかもしれない。どうせ同じ死ぬなら、という覚悟で彼を説得することにしたのだ。

犬の散歩から帰宅した彼は、私の荷物がないのを見て、すぐにキレた。

「どういう事だよっっ?!」

「資格のために通学と実習をしないといけないの、ここからだとどうしても遠くて、平日だけ実家から通わせてください!」

と土下座してお願いした。

家中追い回された。

俺のもとから逃げるなんて絶対に許さない。それでも行くなら、殺して血の一滴まで飲んでやる

彼に捕まって引き摺られた。

あぁ、やっぱり殺されるんだ……

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もう恐怖よりも穏やかな気持ちというのか、諦めの心境というのか、頭が真っ白になった。彼はどうやって私の身体を切るのか図を描き始めていた。包丁を選ぶというので、それは痛そうだな……と我にかえる。ダメ元で食い下がる事にした。

「こんな事であなたの人生を棒に振らないで。あなたの才能を必ず活かすから。週末は必ず帰ってくるし、一生あなたの仕事も家の事も手伝うし、あなたは何も失わないから、お願いだからどうか平日だけ……」

たぶん、こんな事を必死で言ったと思う。5年間で彼の性格はだいぶ詳しくなっている。褒められたいポイントもわかる。説得材料を一生懸命並べ立てた。散々罵られたり脅されたりしたが、最終的にはなんと、平日だけは家を出て良い事になった。