5年ぶりに自分の意思で外出
久しぶりに自分の意思で外出して外の空気を吸った。嘘のようだが本当に世界が明るくハッキリとし、景色の輪郭が見えた。空気が肺から身体中に染み渡った。自分の人生を取り戻せたのだと興奮した。

そこから、半年間は毎週末彼のもとに通った。一週間分の料理と家事、仕事を土日でする。そうして、少しずつ私のいない生活に慣れていって貰い、
その後は着信拒否をしているのでわからない。しばらくは私を探していたようだが、周りの人達が諭してくれたようだった。今は誰かと結婚したそうだ。
別れてから知ったが、彼は周りの知人たちには私の束縛がひどくて鬼嫁みたいなんだよ〜と言っていたらしい。私本人が、彼の友人と会うのを嫌がり、2人だけで居たがるので集まりに参加しないのだ、と皆が思っていた。私の友人にもそう伝わっていた。
そうか、そうやって私は孤独になっていったんだな、と知った。
人を好きになって、自分の意思で相手と過ごすことを決めて、もし途中で違和感を感じても、「じゃあ辞めた」とすぐに投げ出すことは簡単ではないと思う。結婚や同棲をしてしまっていれば尚更だ。その環境の中でどうにか順応しようと無意識に行動してしまう人が多いだろう。
私はあの小さな仕事場で、世界から取り残されて、時間が止まったような5年を過ごしていた。
2人だけの狭い世界に居ると、それが普通で、全てなのだと思ってしまう。当時は思考も放棄してその沼から抜けられなくなっていた。これがDVなのだ、脱出したほうがいいのだという認識すらできないままに。
外から当時の自分を見ると、なんて人生を無駄にしていたのかと思う。誰のための人生だったのだろう。
だから、せめてあの経験を無駄にしないよう、今はいつも自分に確認して生きている。誰かに見させられている世界ではなく、私の人生を、本当に私自身の意思で歩めているのか?と。
