米津玄師が2019年の日本を席巻している〜「国民的ヒット」の理由

キーワードは「美しい」という言葉
柴 那典 プロフィール

米津玄師から見えてくる時代性

映画『海獣の子供』と「海の幽霊」との関係も深い。

タイアップのきっかけは、漫画家・五十嵐大介による原作を10代の頃に原作を読み大きな影響を受けたという米津の側から映画の制作サイドにアプローチしたこと。

「潮風の匂い 滲みついた椅子がひとつ」や「星が降る夜にあなたにあえた」など、歌詞には『海獣の子供』の原作で描かれていたモチーフをもとにしたフレーズが散りばめられている。

 

そして、映画『海獣の子供』も、「わかりやすさ」より「美しさ」を追求した作品だ。

14歳の少女と、ジュゴンに育てられたという2人の兄弟とのひと夏の出会いを描く同作。水族館や海を舞台に繰り広げられるミステリアスな筋書きは、生命の神秘をイメージさせる壮大なストーリーに展開していく。

物語には難解なところもあるが、水しぶきや光などの美麗なアニメーション描写と、久石譲による音楽で、圧倒的な映像体験を味わえる作品になっている。

映画を観た人はみな、「海の幽霊」の「大切なことは言葉にならない」という一節が、ラストで大きな説得力を持って響くことに気付くはずだ。

「わかりやすさ」よりも「美しさ」がヒットの要因になる、ということ。等身大の親近感や耳馴染みの良さよりも、圧倒的なものへの憧れが、人々を惹きつけているということ。

米津玄師の数々の楽曲が世に受け入れられていることからは、そんな今の時代性を感じ取ることができるのではないだろうか。

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