話題の映画『新聞記者』を観て感じた、この国のリベラルの限界

ネットでは存在感が際立つも…

大いに引っかかった部分

私自身の映画の感想としては、演出の方向性とクオリティは評価したい。社会派作品だと人物たちが感情をあらわにし怒鳴ったりしがちだが、この映画では抑制が効いていた。また場面によって映像のトーンを変えるのも、やりすぎにならずにうまく表現できていたと思う。全体に、説明的になりかねない物語を、難しい言葉で説明しすぎずに進めていたと思う。

ただ主人公の女優を韓国人にしたのは、はっきり失敗だと感じた。演技は素晴らしいのだが、セリフを喋るとたどたどしく、帰国子女の設定があるとはいえ納得できない。演技や佇まいはシリアスなのに、かなり興ざめだった。

主演女優の日本語に違和感を持ったとの感想は多く見かけるので、キャスティングの失敗だったと言っていい。「日本人の女優は何かを恐れて引き受けてくれなかったからだ」とする記事もあるが、それならば脇役の本田翼に主演を頼めばよかったのではないか。

脇役でしっかり有名女優が出ているのに、主演は有名女優に断られたから韓国人女優になったとの説はおかしいと思う。この点は “推測”で書かれた記事が出回っているだけなので、そのまま信じこまない方がいい。

 

さて、本稿はここからが本当に言いたいことだ。ただしネタバレになる箇所がいくつかあるので、それが嫌な人は見終わってから読んでほしい。先に読んでも台無しにならない書き方は心がけるが、そこは“自己責任”で。

まずこの映画を見て大いに引っかかったのは、ここ数年政権の周辺で起こった「リアルな話」が出てくるのに、本筋の物語がフィクションであることだ。実在の人物も登場するし、実際に起こった出来事もほぼそのまま出てくる。いまの政治状況を描いていることはまちがいない。しかしそうであれば、物語も現実のものであるべきではないか。

この映画についてハリウッド製作の『大統領の陰謀』や『ペンタゴン・ペーパーズ』『バイス』などを引き合いに出す人が多い。だが私からすると全然違う。それらの映画は「事実」をもとにしている。「こんなことがあったんですよ」という映画だ。もちろん映画としての脚色や演出があるのは踏まえつつ、私たちは「そうか、そんなことが実際にあったのだな」と受け止める。

ところがこの映画では、物語の核心となる疑惑はまったくのフィクションだ。政権を守るために官僚たちがやっていることもフィクションだ。だから少なくとも『大統領の陰謀』とは比べられないし、本当のことが背景なのに途中から嘘になる映画をいま作ることにどんな意義があるのだろうと思ってしまう。

今なら、事実を映画化できたのに、というもったいなさがこの映画にはある。

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