2019.08.01
# 井上尚弥 # ボクシング # 井上真吾

井上尚弥の父が語る「家族だからこそできること」とは?

井上真吾氏特別インタビュー その②
ボクシング井上尚弥選手を育て上げた父親でありトレーナー、井上真吾氏の特別インタビュー第2弾。5月18日に行われたエマヌエル・ロドリゲス戦を振り返った前回記事はこちら

「周りからの期待」というプレッシャー

――今回のトレーニングの最初の方では、井上選手のコンディショニングが悪く、石田匠選手や、アマの堤駿斗選手とのスパーリングでも不調だったとか。

真:本人もマスコミにそんなことを言っていましたね。でも、自分はそうは思っていなかった。あれは簡単な話で、メディアなんかに「前回は70秒KOだったので次は何秒」・・・みたいに煽られて、そうすると、やっぱり意識するじゃないですか。それでパワーに頼っちゃったんです。

だから自分、言ったんです、いったんその意識を外せよと。いいんだよと。たまたまあのときは、ああいう結果になったけど、次は長くなるかもしれない。でも、初心に返ればいいんだよと。

尚のパンチで心が折れて沈む選手もいれば、きついけど、頑張る選手もいるんです。そうすると、悪い意味で尚とかみ合ってしまったり、そういうことはあるわけで。でも、その時はパワーで押すのではなく、テクニックをチョイスすればいいだけなので、自分としてはなんともない。

外して打つ、外して打つ、そのようにして少しずつ崩してゆく。それだけなんです。難しいことなんか何にもない。でも、尚は周りの期待があるから、「倒さなきゃ」って頭が筋肉になっちゃって、悪循環になっていた。自分にはぜんぜん簡単だったですよ。

だから、実際、すぐ直ったじゃないですか。それは尚が、自分が言ったことをすぐに把握できたからなんです。

でも、たしかに親であって1から10まで見ている自分しか、やっぱりわからなかったでしょうね。だから周りが騒いでいるほど、自分は深刻なこととも思ってはいなかった。

たしかに、石田匠選手とのスパーの時は、マジ、ムカつきましたよ(笑い)。尚に対して。「おまえ、何やってんだ」、って。

ムキになった息子と不満気な父

ただ、その不調と言われたスパーリングだって、実際には尚が圧勝はしてるんです。ただ、自分が求めているスパーではなかった。それで、自分、すぐ帰っちゃった。

そしたらすぐ、尚から、「思い通りのスパーができなくてごめんね」、ってメールがあって、自分も、「でも、むずかしいことじゃないんだよ、考え方をリセットしてやればすぐ戻るんだよ」って言ってやったんです。で、その後、グアムにキャンプに行ったときにも、ちょくちょくそういう話をしてました。

――堤選手にも、けっこういいスパーをされたという報道もありましたが。

真:でもそれは、いま言った、グアムキャンプ前の1回目だけです。堤選手とは3回スパーをしましたが、1回目はさっきも言ったように、力ずくで行ったから相手も頑張った。でもグアムから戻ってからの2、3回目は技術で行ったからワンサイド。そのあたりはすぐ切り替えができました。

それに1回目だって、やられたわけではないんです。尚がムキって雑になったのでお互いが打って打たれて、尚もいつも以上に打たれたというだけで。

  • 日本銀行 我が国に迫る危機/河村小百合
  • 我が身を守る法律知識/瀬木比呂志
  • 戦争の地政学/篠田英朗
  • 今を生きる思想 福沢諭吉 最後の蘭学者/大久保健晴
  • 4月の発売予定
  • 現代新書100(ハンドレッド)創刊!
  • データ思考入門/荻原和樹
  • マルクス 生を呑み込む資本主義/白井聡
  • 地政学と冷戦で読み解く戦後世界史/玉置悟
  • 『鎌倉殿の13人』で学ぶ日本史/呉座勇一
  • 4月の発売予定