右足と左足の筋力の明らかな「差」
股関節の柔軟性を高めるストレッチと並行して行われたのが、足の筋力強化メニューだ。ウッチーは、ソファーの背につかまり、片足を上げた状態を一定時間キープする筋トレメニューを考案した。私が階段を上るときに、右足を軸にして左足を上げる動きを繰り返しているのを見て、思いついたそうだ。
私は電動車椅子から降りると、歩くときも階段を上るときも、無意識に短くて太い右足を軸足にして左足を前に出していたようだ。そんな動きを40年近く続けてきたせいで、何をするにも右足に頼るようになっていたようなのだが、その左右差を解消させつつ筋力をつけることが喫緊の課題となった。
「右足を軸に、左足を上げて、そのままの姿勢を一分間キープしてください」
ウッチーはそう言いながら、タイマーのスイッチをオンにする。私はかけ声に応じて左足を上げる。1分が経過した。
「うん、まったく問題ない。これだったら、まだ数分は立っていられそう」
右足で立つのはだいじょうぶだ。
「では、つぎは右足を上げてください」
左足を下ろし、右足を持ち上げる……持ち上げようとする。
「うーん、だめだ。上がらない」
右と左でこんなに違うなんて。
「左足を軸にするときは、30秒でやってみましょう」
ウッチーの譲歩で少しハードルが下がったが、それでもキツい。
「ああ、もうだめ……」
「まだ15秒です」
ウッチーの声も虚しく、私は足を下ろし、そのまま床に座り込んだ。息は切れ、首筋からどっと汗が噴き出す。左右の筋力差は歴然だった。