「総選挙」の結果
集計作業も道半ばのまま、7月6日(土)の夜明けを迎えた。
他の文庫に比べれば短いが、何といっても創刊以来31年の歴史を持つ講談社文芸文庫である。今日までに刊行した作品は1200点余り。私が眠っている間にも、それら一冊一冊に、バラバラに票が投じられている。やってやる! という気持ちが沸き立ってきた。
が、私はここで、自分の迂闊さに気付いて蒼ざめた。それというのも、集計の方法については考えていたものの、肝心の、「いつ」までに区切ってそれを行うかということには、気が回っていなかったのだ。
検索してみると、タグへの「投票」は続けられているものの、そのペースは一昨日、昨日の爆発的なものではなく、次第に収まりを見せつつあった。結果に反映される「投票」の期日は、6日いっぱい――時間にして2日半の短期決戦とすることが妥当かと思えた。
【告知】
— あさだ (@Ayakoasada) July 6, 2019
読書人の皆様方におかれましては #この講談社文芸文庫がすごい総選挙 お楽しみいただき感謝の極みです。
急な話で恐縮ですが、ひとまず、本日23:59を以て総 選 挙の結果を出してみたいと考えております。もちろん、それ以降もタグを用いた推し紹介はお続けになっていただければ幸いです。
集計する最中にも、様々に温かい労いと激励のお言葉を頂戴した。また、収められた作品と言うよりかは、文芸文庫というレーベルそのものの魅力と「すごさ」について語る方々もいらっしゃる。
講談社文芸文庫というレーベルが、予想以上に多くの人々から支持され、何より愛されていることを感じ、励みになった。
講談社文芸文庫は装丁が本当にステキなので、宝物みたいに大事な作品を包み込む入れ物として最適だよ。丁寧な作りなんだけど手触りとか色味とか優しくて軽くて、大切にしつつも持ち歩いて時々読み返したくなる。
— 秋好21(@kikuaki21) July 5, 2019
講談社文芸文庫でしか読めない作品というのが一定数存在すると思うし、何しろコンスタントに発行されてるのが本当に有り難い 表示の丁度よい柔らかさや文字の読みやすさも大好き
— ANNA(あんな) (@ANNA_photogra) July 4, 2019
ちょっとお高いけど自分への贅沢として買い集めてる
大好きなレーベルの1つです#この講談社文芸文庫がすごい総選挙 pic.twitter.com/qxsRD7gkGk
文庫本好きで本当に良かった!嬉しい!!
— frasco (@frasco01482502) July 6, 2019
既に「投票」された分の集計が終わる頃には、夕刻となっていた。
私は夕食を摂るのを忘れたまま画面に張り付いた。リツイートするとともに、作品別の投票結果を小出しにする。勢いは収まったものの投票は少しずつ続いており、一つ一つを拾い上げ、エクセルに打ち込むと、思わぬ作品が伸びを見せ、上位層に食い込み、先程までのトップを抜いてゆく。作家別ではある作家が他を引き離し、圧倒的な伸びを見せている。その様を、競馬の実況よろしく煽り立てる。
統計取ってるんですが、作品単体では今んとこ首位独走が倉橋由美子『スミヤキストQの冒険』なんですよね。そして追い上げる藤枝静男!!(『田紳有楽・空気頭』)#この講談社文芸文庫がすごい総選挙
— あさだ (@Ayakoasada) July 6, 2019
上位グループは意外な面子が食い込んでの混戦であります!まさに文字通りの大混戦!先程までのトップが二番手三番手に抜かれた!これは桶狭間なるか!!#この講談社文芸文庫がすごい総選挙
— あさだ (@Ayakoasada) July 6, 2019
そして統計……著者別編は何やら大変なことになっています。いや、やはりこの人は人気だよね!!講談社文芸文庫と言えばこの人、という……おっとこれ以上はやめとこう。#この講談社文芸文庫がすごい総選挙
— あさだ (@Ayakoasada) July 6, 2019
やがて――7月7日(日)の午前零時を迎えた。
Twitterには投下済みだが、結果を示しておきたい。

結果を見てみると、大江健三郎、埴谷雄高といった、文学好きにはよく知られたメジャーな作家とその作品が上位層に多いのは想定内であったが、吉田知子、野溝七生子、竜胆寺雄といった、さほど知られていないと思われる作家と作品が上位に食い込んだことに、まず驚かされる。何よりも、作品別で藤枝静男が大江健三郎を抜いて1位を取ったことには、仰天した。
海外文学も健闘した。上位10位以内に『白鯨』『アルゴナウティカ』が入ったのである。
おれたちのことを忘れてもらっちゃ困るぜ
— スミス市松 (@ichimatsu_smith) July 4, 2019
#この講談社文芸文庫がすごい総選挙 pic.twitter.com/XCyN5qFOBZ
作家別の方では、吉田健一が圧倒的な支持を受け、2位以下を引き離しての1位と相成った。2位は小沼丹、石川淳と続くが、著者別の投票を行ったことで、どれだけ多くの方々が「作家読み」をされているのかが見えて来た。

いずれの結果からも文芸文庫の手広さと奥行きを知り、また、それを読まれる参加者の皆さんの知識量に、ただ脱帽した。