2019.08.05
# 恐竜

最古にして最新? 続々と新事実が見つかる「最初の中国恐竜」の凄み

「恐竜大陸をゆく」夏の特別編
安田 峰俊 プロフィール

クンミンゴサウルスは、もともと1954年に化石が見つかった時点ではルーフェンゴサウルスの仲間のルーフェンゴサウルス・マグヌス(巨型禄豊龍:Lufengosaurus magnus)だとされていたのが、1985年に竜脚類であるとみなされた経緯がある(ただし研究が進んでおらず、「クンミンゴサウルス」の名も正式な学名ではない)。

クンミンゴサウルス福井県立恐竜博物館HPに掲載された、クンミンゴサウルスについてのページ(https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/kids/terakoya/zukan/Kunmingosaurus.html

仮にほぼ同じ時期の同じ場所で、原竜脚類のルーフェンゴサウルスと竜脚類のクンミンゴサウルスが一緒に暮らしていたとすれば興味深い現象だろう。

クンミンゴサウルスの体長は11メートルくらいだったとみられ、ルーフェンゴサウルスよりもすこし大きい。原竜脚類は、より巨体化する方向に進化していった近年の竜脚類にニッチを奪われる形で衰退していったのかもしれない。

次々と大発見を生む「スゴい恐竜」

ちなみにルーフェンゴサウルスは、生息数が多い生物だったのか、それとも化石が残りやすい環境に多く分布していたのか、現在までに中国全土で30体以上の化石が見つかっている(余談ながら原竜脚類の代表選手である三畳紀のプラテオサウルスも、ドイツ・フランス・スイス・グリーンランドなど欧州の各地で数多く化石が発見されている)。

中国のあちこちの博物館でルーフェンゴサウルスに出会えるのも、こうした事情が関係しているのだろう。ルーフェンゴサウルスの出土数が極めて多いことは、研究の進展のうえでもプラスになっている。

2013年には、カナダのトロント大学の古生物者ロバート・R・ライス率いる国際研究チームが、雲南省で発見された20体近くのルーフェンゴサウルスの胚化石を分析し、胎児が驚異的な成長速度で育っていたことを明らかにした。

また、2017年2月には1億9500万年前のルーフェンゴサウルスの肋骨化石の血管のなかから、タンパク質の断片が発見された。これは従来の研究よりも1億年以上もさかのぼる、化石中に保存された最古のタンパク質だった。

さらに2018年3月には、別のルーフェンゴサウルスの肋骨の化石に骨髄炎の痕跡が残っていたことが報告されている。どうやら肉食恐竜に噛まれたことで細菌感染を起こしたものらしく、ルーフェンゴサウルスの生態を解明するうえでも重要な発見だった。

日中戦争の戦火のなかで研究がおこなわれた、中国でも最も古くから知られている恐竜・ルーフェンゴサウルスは、状態が良好な化石が多く出ていることもあって、現在でも学術的に非常に重要な存在なのである。

地味な外見にもかかわらず、長年にわたり中国恐竜の代表選手として知られてきた経歴はダテではない。

「神州第一龍」ルーフェンゴサウルスは、けっこうスゴい恐竜なのだ。

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