今年の夏休みは、キャンプに出掛ける人が多いのだとテレビのニュースで伝えていた。理由は経費削減。一人万単位のホテルに泊まる国内旅行や、海外旅行よりも旅費が安価で済む。それが理由だと報じられていた。

実はファミリーだけでなく 空前のキャンプブームだそうだ。日本オートキャンプ協会が発行する『オートキャンプ白書』によると、2012年に720万人だった全国1300か所のオートキャンプ場を利用した人は、2018年には850万人に増加。ここ6年連続して前年比プラスである。

ではそのキャンプは子どもたちにどんな影響を与えるだろう。教育の現場を長く取材してきたジャーナリストの島沢優子さんに、自身の体験と積み重ねてきた教育の視点から「子どもたちにも絶対的効果のあるキャンプ」について教えてもらった。

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とにかく自由に

十数年前。わが家も夏休みはキャンプだった。ボックスカーを改造した8ナンバーのキャンピングカーを購入。まずはフェリーで北海道へ行った。行きは新潟から小樽まで、帰りは苫小牧から仙台。

海上は電波が届かないため、携帯電話も鳴らない。ビールを飲んだら寝る。大浴場で海を眺めながら湯につかる。またビールを飲むを繰り返す。子どもたちは預けられた愛犬に会いに行ったり、船内のミニシアターで映画を観たり、本を読んだり、ゲームをしたり。何も急がない。何をしてもいい。旅は非日常である。とにかく、のんびり、自由に過ごせた。

子どもにも、この「のんびり」は必要だ。これも10年ほど前だが、野外キャンプを推進するある団体が行った小学生対象の調査について取材したことがある。

「キャンプで一番楽しみにしていることは?」の質問で、1位は温泉。自由記述の「一番やりたいことは?」に対する回答で最も多かったのは「ぼーっとしたい」だった。小学生が、まるで仕事に疲れた中年サラリーマンのようになっていた。

現在大学4年の長男と、2年生の長女は、小学生の頃そこまで疲れ果ててはいなかったが、キャンプに慣れさせるというか、気持ちを「ノセるまで」は苦労した。

日常よりも仕事が多い

キャンプといえば、楽しくバーベキュー、焚火の前でビール飲んでおしゃべりと、なんだかビールばっか飲んでますが、そりゃ天国だぜ、イエイ!というイメージであろう。

が、労せずその時間が待っているわけではない。キャンプ場に到着したら、私たちは息つく間もなく動き始める。

まずはテント設営を家族全員で行う。子どもたちは主にペグを打つ。それが終わると、子どもら二人で、水汲み、小枝集め、主に犬の排便、排尿を目的とした散歩。終わると、母の料理アシスタントとして包丁を持つ料理班と、寝袋を並べるなどするベッドメーキング班に分かれる。

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