「木村さんは、以前から障害者政策に関する活動に取り組んでいて、厚生労働省との交渉などにもあたってきましたから、政治家としての適性があることはわかっていました。
ALS患者の舩後さんについては、コミュニケーションができるのか、という点に疑問を持たれる方が多いと思います。全身麻痺で話ができず、呼吸器をつけて、胃ろうもしていますから。でも舩後さんは、以前から介護事業所の副社長を務めて実際に経営にも参画していますし、もちろん頭脳も明晰です。
私が重度障害者の方に立候補していただきたいと考えたのは、『生産性で人間の価値を測るような世の中は、もうやめよう』と訴えたかったから。ただ、生産性という観点から言っても、2人は非常に優秀なんです。むしろすごいのは、そんな2人が能力を発揮しなくても、国会にただいるだけでも、周りがどんどん動くということですよね」
強行採決はできなくなる
8月1日に召集された臨時国会では、舩後・木村両議員が急遽設置されたスロープを通って登院、本会議場に入った。2人の初登院の様子は、今回当選した議員たちの中で最も大きく報じられている。「れいわ新選組」は選挙期間中のみならず、選挙後にもメディアと世論をジャックしたというわけだ。
「極端に言えば、2人が国会の場にいてくれるだけでもいいと私は思っているんです。実際、初登院する前から、すでにいろんなことが変わり始めたんですから。
もちろん、障害者に関わる制度改革など、これから議員として取り組まなければならないことはたくさんありますが、質問などの事前準備をしっかり行えば、コミュニケーションの面でも問題ないと考えています。
舩後さんの場合、事前に予定していない言葉のやりとりは文字盤を使うことになるし、それには当然時間もかかる。でも、舩後さんが何を言いたいのかわかるまで、他の議員がじっと待つということも、障害者への合理的配慮に含まれるはずです。
それこそが、国会に重度障害者が入るということの意味なんです。

これまで、『国会議員は健常者である』という前提で作られてきた国会審議のリズムやペースを、これからは2人に合わせていくのが当然になると思うんですね。法案を急いで審議して無理やり通す、というようなことも、もうできなくなる。スローダウンするしかない」