2019.08.27

魔裟斗、原辰徳、田中泯…「カッコいい」のは誰か、編集部員が大激論

あなたはジョン派?ポール派?
現代新書編集部 プロフィール

「カッコいい」は何かを排除する?

ハジメ:ここで『「カッコいい」とは何か』担当編集のヨネがどうぞ。どうせ一生懸命考えてきたんだろ。

ヨネ:平野さんもマイルス・デイヴィスを「カッコいい人」の1人に挙げていらっしゃいますけど、少年たちはカッコいい音楽や振る舞いにしびれるわけです。そのしびれを存分に体感できる音楽コンサートなどは、圧倒的な動員力を持つという点も、平野さんの重要な指摘だと思います。

さて、多感な青春時代から振り返ると、私がしびれたのはまず、X JAPANでした。YOSHIKIやTOSHIに魅了されて、部屋で頭を振ってシャウトしたり、編み棒を両手にもってドラムを叩く真似をしていたんです。

熱唱するX JAPANのTOSHI(photo by gettyimages)

中学生のヨネ少年は、「自分もX JAPANのようになれる!」と信じていた時代があった……今もまだ、ああいうふうになれるんじゃないかなあ。

ハジメ:まだなろうとしてるの!?

ヨネ:たとえ60歳になってからでも、ハードロックはできますよ!

ハジメ:「エンドレスレイン」とか「紅」とか、カラオケで高い声出る? いやいやよくわからん。イッツー、突っ込んでよ。いつも俺に突っ込んでるみたいに。

イッツー:いや、基本的にアレですね……。

ハジメ:またそうやって、ちょっと頭いいからって人をバカにしたような言い方をする!

ジュン:まだ「アレ」としかしゃべってないのに突っ込まれた(笑)。

イッツー:一応ポストモダン現代思想をくぐった身からすると、「真のカッコよさ」みたいなものは存在しないと言うほかないし、何かを「カッコいい」と言明することには一定の留保が必要だと言っておくべきだろうと思います。

マル:なんか、まさに現代思想っぽいね。

イッツー:というのも、何かを「カッコいい」と言うことはつまり、それ以外の何かを「カッコよくないもの」として序列化し、排除することにつながりうるからです。そういう線引きに対してはつねに注意深くあらねばなりません。

ハジメ:ちょっと何言ってるかわからない。

イッツー:……みたいな言い方が現代思想の「作法」です(実際そう思ってますけどね)。こういう作法も、カッコいいとかわるいとか、いろいろ言われそうですね(笑)。

他者のカッコよさを欲望する

イッツー:でも今日はそれを踏まえたうえで、あえて言わせていただきます。僕のカッコいいは田中泯さんです。

ハジメ:あぁ、ダンサーの。カッコいいよね。

イッツー:いま御年74歳なんですけど、そのスタイルも身振りも、端的にカッコいいです。ダンスだけでなく、カラダに裏打ちされた言葉だったり、山間に暮らして農業をやるという実践だったり、いろいろ含めてとても美しいし、カッコいいなと思いました。

彼のダンスを見た後は、たとえば階段の下り方とか、電車の乗り方とか、そういった自分の何気ない動作がとても汚なく思えてくるし、何かによって「させられている」動作なんだということに気がつかされます。「彼のようにカラダを動かしてみたい」とか、「自分にももっと違ったカラダの動かし方があるんじゃないか」と考えるきっかけをもらえたのが大きいですね。

ヨネ:『「カッコいい」とは何か』でも、カッコいいの条件として、自分にはない美点を持っていることや、自分もそうなりたいと感じさせる同化・模倣願望が指摘されています。

イッツー:今日のみんなの話もそうだけど、「他者のカッコよさを欲望する」という感じなんだよね。自分が何を「カッコいい」と思っているか告白するなんて、心の奥の恥ずかしい部分に触れるようなことなんだけど、それが「他者のカッコよさ」を媒介にして表明されるところがおもしろい。

マル:イッツ―は格闘技マニアだから、てっきりプロレスラーとか挙げてくるかと思った。

ハジメ:人気レスラーのオカダ・カズミチとか?

イッツー:オカダ・カズチカ(笑)です!

ちなみに僕がリスペクトしてるのは、オカダじゃなくて棚橋弘至。彼はK-1やPRIDEに押されてプロレスが振るわなかった時期にも体を張ってジャンル全体を支えてきたし、自分の信じるプロレスのスタイルを貫き通して、今これだけのブームをつくった。そういう芯の強さにカッコよさを感じます。

 

マサ:イッツ―さんは、普段から汗の拭き方ひとつとってもカッコつけてますね。

イッツー:なんでよ(笑)。

ヨネ:振る舞いにはカッコよさが出ます。だから私もX JAPANらしい振る舞いをいつも心がけているわけです。

マル:カラオケルームで飛び跳ねてるだけじゃない(笑)。

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