2019.08.27

魔裟斗、原辰徳、田中泯…「カッコいい」のは誰か、編集部員が大激論

あなたはジョン派?ポール派?
現代新書編集部 プロフィール

カッコわるい反逆者が好き

ヨネ:次は、今年無事に定年をお迎えになられましたヒロシさん。

ハジメ:ヒロシさんが思うカッコいい人は興味あるな。

ヒロシ:水を差すようで悪いけど、まったく考えたことないですヨ。

ハジメ:自分が一番カッコいいからとか思ってるでしょ(笑)。

ヒロシ:そもそもカッコいいとか、嫌いなんでス……自分はカッコわるい人のほうが好きですネ。大学の卒論でペトリュス・ボレルという異端のフランス人作家をテーマにしたんです、誰も知らないでしょうけド。

ペトリュス・ボレル(photo by gettyimages)

彼は作品が売れなくなって、役人として植民地アルジェリアに行くんだけど、上司と喧嘩して辞職してから、農民になって畑を耕すんですネ。禿げても帽子をかぶらないで耕していて、周りから帽子をかぶるよう勧められるけど、「神様がもう髪の毛は要らないと言ったので、帽子は必要ないんだ」と言って……日射病で死んじゃっタ。

ヨネ:たしかにカッコわるい。死んだら元も子もない……

ショウ:いや、それはカッコいいな。自分自身の生き方を貫いている。

ハジメ:カッコいい派とカッコわるい派に分かれたね。おもしろい。

ヒロシ:フランス語で言うとrévolteですけど、彼はずっと「反逆」していたんですヨ。だからいわゆるカッコいいということには興味がないですネ。

そのころの僕は魔裟斗

アキラ:次、ハヤト君のカッコいい人、知りたいです。

ハヤト:僕は「NCIS」というアメリカのドラマの主人公、リロイ・ジェスロ・ギブスですね。たぶん僕のなかでカッコいい人って、自分が持っていないものを持っている人なんですよ。

彼はいわゆる、コンプライアンスに引っかかるようなパワハラ上司なんですけど、実はすごい部下思いで、強いリーダーシップでチームを引っぱっていくんです。自分にはない「男らしさ」みたいなものが、非常にカッコいいと思ってます。

ヨネ:男らしさについては、『「カッコいい」とは何か』第7章「ダンディズム」で詳しく論じられています。

マサ:カッコいいを語るとしたら、コンプレックスが大事じゃないですか? 自分が持っていない強さとか、逆境を戦っている姿っていいですよね。僕は高校生のときにK-1にドはまりしました。教室の片隅で本を読むのが好きなタイプだったんですけど、たぶん自分にない何かに憧れて格闘技にはまったんです。

特に、そのころの僕にとって最大のヒーローは魔裟斗でした。まず「反逆のカリスマ」っていうキャッチコピーがいいです。他にも「ミスターストイック」小比類巻貴之。彼もカッコいい。あとは「変幻自在のトリックスター」須藤元気

イッツー:ヘビー級だと、「南海の黒豹」とか、「ハイパーバトルサイボーグ」とかね!

マサ:とりわけ魔裟斗のどこがいいかって、まず対戦相手を挑発するんですけど、「あいつのパンチは当たりませんよ、俺の体に触れさせない」みたいな感じで、ちょっとスマートさのある挑発なんです。客を楽しませることに全力傾注で、毎試合インファイトでKOを狙いにいく姿勢が本当に素晴らしかった。とにかくちょっと語りたいのは2008年の……

ヨネ語るときにとめどなく熱くなってくるのが、「カッコいい」の神髄だね!

マサ:2008年のK-1 WORLD MAXのトーナメント準決勝で、佐藤嘉洋と対戦する。彼のキャッチコピーは「日本No.2の男」。魔裟斗のせいでNo.1になれないから、死に物狂いでくるわけ。その試合で佐藤が意地を見せて、魔裟斗から1回ダウンを奪うんです。

これはもう、魔裟斗大ピンチという状態になったんだけれども、その後に、気迫で攻めて、ギリギリでポイントを取って延長に持ち込んで。さらにその延長でも気迫を見せて、ギリギリ勝って。これはもうすごく湧いた。

そのあと、連戦でボロボロのまま、決勝で「美しい死神」アルトゥール・キシェンコと闘うんです。魔裟斗より年下の活きのいい選手で、イケメンなのにボディがえげつない(笑)。

そいつは元気な状態で向かってくるのに対し、魔裟斗はボロボロだから厳しい戦いになって、やっぱりまたダウンを取られちゃう。今度こそダメかと思ったら、気迫で押し返して、延長に持ち込んで、また勝つという展開を見せて、王者になった。ダウンを取られてダメかと思ったら、気迫で延長に持ち込んで世界王者になるんです!

 

そのとき日陰者だった僕は、さいたまスーパーアリーナで観戦していたんですけど、勝った瞬間「魔裟斗! 素晴らしい試合をありがとう!」と叫んでいました。しかも、世界王者になってから数日後に引退宣言するんですよ。その理由が「最強で辞めたいから」。これまたしびれますよね。……ホントはもうちょっと語りたいんですけど(笑)。

ハジメ:もうこの勢いで、魔裟斗の本を作ったほうがいいんじゃない?

イッツー:その大会はよく覚えてるよ。でも、魔裟斗は引退後にタレントとしてテレビに出演したりして、「飼いならされたカッコよさ」みたいになっちゃったところもあると思うけど、どう?

マサ:いやいや、現役時代に「カッコいい」を貫いたことが素晴らしいんですよ。選手時代の魔裟斗のカッコよさを、今の若者にも知ってほしいなぁ。

関連記事