いま、自分がどこにいるのか。それを知ることと少し似たようなアプローチで、米倉涼子さんは自らの体がいま、どのような状態なのかに敏感です。すっと歩き出す足をもっとしなやかに綺麗に動かしたい。舌をどう動かすとネイティヴのような滑らかな発音になるのか。フィジカルの葛藤が女優・米倉涼子の表現を拡げていきます。
わずかでも、
体の変化は自信につながる。
姿勢がいい、歩幅が広い、
どんなことでもいいと思う

――ダイナミックにしなやかに、そして細やかに。米倉涼子さんが舞うように自由に動き出すと、自然光の差し込むスタジオが一瞬にしてドラマチックな劇場へと変わってしまう。体を通して豊かな感情を伝える表現は、彼女の大きな武器だ。
「たとえば『ドクターX』で大門未知子がたい焼きをもらって喜ぶときに、ちょっと回転してみたりするんです。その動きによって彼女のうれしい気持ちがより伝わるし、ダンスが好きなのかな? なんていう裏側のストーリーも広がっていく。
体を使った表現は私に求められている特技のひとつかもしれません。でもバレエをやっていた子供の頃は、ずっと体がかたいことがコンプレックスだったんです。みんなと同じことをやっているのに、なぜ私はここまでしか脚が上がらないんだろう、ということがすごく多かった。当時は解決方法がわからなかったけれど、今は周りに体のことを教えてくれる人がいるので頼っています」