先月、作家の室井佑月さんが、そして今月に入って上皇后の美智子さまも乳がんと診断されたことを公表。改めてこの病気に対する関心が高まっています。
室井さんは8月9日に右乳房の一部摘出の手術を受け、無事終えられたことをツイッターで報告。彼女は糖尿病があり、豊胸手術を受けたことがあったようです。糖尿病は、一見乳がんとは関係なさそうですが、乳がんのリスク因子のひとつです。また、豊胸術後では乳がんの発見が困難になったり、病院でマンモグラフィなどの検査を断られてしまうこともあります。
乳がんの「リスク因子」
乳がんもそうですが、一般的に病気にはさまざまな「リスク因子」があります。リスク因子というのは、それがあると、特定の病気に、ない状態よりもかかりやすくなるというものです。有名な例は、タバコと肺がんの関係です。
リスク因子があったらどうしよう、と、不安になる女性も多いと思います。しかし、あまり心配する必要はありません。リスクというのは、ひとつひとつでは、極端に大きなものにはならず、通常よりも少し罹患する可能性が高くなるもの、という程度にとらえてもらったほうがいいかもしれません。ただ、小さなリスクの上昇も、積み重なることで大きな影響を持つこともないとはいえず注意が必要です。
では、乳がんのリスクにはどんなものがあるのでしょうか。遺伝的な素因、ホルモンの状態(初潮や閉経が早いか遅いか、ホルモン剤を内服したかどうか)、生活習慣や環境による要因がありますが、遺伝やホルモンの状態は、本人には選べないことがほとんどでしょう。それに対して環境要因や生活習慣は、少しの心がけで変えることができます。ここでは、生活習慣や環境要因で、どんなことがリスクになるのか、順番に見ていくことにしましょう。
ここに挙げるリスクは、必ずしも同程度のものではなく、「絶対に乳がんのリスクをあげる」ものから、「乳がんのリスクをあげる可能性がある」ものまで、グラデーションがあります。では、リスクのはっきりしているものから順にみていくことにしましょう。
1. 喫煙

肺がんと同様、乳がんにおいても、タバコは「ほぼ確実にリスクをあげる要因」と考えられています(*1)。ただ、肺がん(日本人では、喫煙者は非喫煙者の4〜5倍のリスク)よりは、リスクの上昇は弱めで、どの研究でもおおむね2倍以下です。今では、タバコを吸っている人はかなり減りましたが、さまざまな病気の原因になっているタバコは、できれば今すぐにでもやめるのが賢明です。また、受動喫煙でもリスクが増加する可能性があります。