2019.08.15

JR東海・静岡「リニア問題」第2ラウンドへ…国交省参戦の行方

2027年の開業に間に合うのか

静岡県がこだわる「水問題」

2027年に超電導リニア方式で開業予定の中央新幹線について、静岡県がJR東海に対して工事の許可を出さないという問題。これに関して、ついに国土交通省が調整に乗り出す。8月9日、国土交通省、静岡県、JR東海は連名で「リニア中央新幹線静岡工区の当面の進め方について」という文書を公開した。

静岡県区間の未着工問題は、5月30日のJR東海・金子慎社長の発言と、これに反発した静岡県の川勝平太知事の発言がきっかけで広く知られる状況になった。JR東海側は未着工区間の影響による開業時期の遅れを懸念。一方の静岡県側は「問題解決より開業時期を優先するとは無礼千万」と激しい言葉で反応した。この2つの報道以降、メディアは「JR東海と静岡県の対立」と煽っている。

 

これまで多くの人々は、中央新幹線は開業に向けて着々と工事が進んでいると思っていただろう。しかし、目標年度通りに開業できないかもしれないおそれが出てきた。

何も鉄道ファンにとって楽しみが延期されるだけの話ではない。2027年度には品川〜名古屋間を40分、2035年には品川〜大阪間を67分で移動できることへの経済界の期待も大きい。それだけに未着工問題の露呈は、各方面から高まる期待に冷や水を浴びせる結果となったのである。

静岡県知事の言う問題解決とは、「大井川の水量減少を認めない」「南アルプスの環境を守れ」だ。要するに、中央新幹線が静岡県を通過する約11kmの区間が南アルプスのトンネルであり、トンネル掘削による湧水によって大井川水系の水量が減る。だからトンネルから出た水をすべて大井川に戻してほしい。静岡県としては水利問題がもっとも重要だ。年々流量が減少している大井川の水をこれ以上減らすわけにはいかない。こういう理屈だ。

長野県・山梨県・静岡県に跨る南アルプス/Photo by iStock

大井川水系の水を利用する生活者は約62万人。ダム、農業用水、工業用水も考えると、経済規模はGDPのうち約2.7兆円になる。静岡県としては生活と経済を守らなくてはいけない。なにしろ中央新幹線は静岡県民に直接の利益を与えず、南アルプスの自然を脅かす存在だ。まずここが、静岡県民の不安要素だと理解しておきたい。

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