トンネル工事の残土問題については、長野県下條村が8月6日に「リニア中央新幹線関連工事対策協議会」の初会合が参考になる。
この協議会は、今後の中央新幹線工事で発生する残土処理地区の埋め立てで生じる課題や、埋め立て後の用地利用計画について、JR東海などと情報共有し対応を目的に設けられた。JR東海は協議会への連絡を密にし、スケジュールも協議会で検討する。地元に十分納得していただけた段階で工事を進めたい考えだ。

そして話を冒頭に戻すと、国土交通省は静岡県とJR東海の意見を調整するという。具体的にはどんな役割を果たすだろうか。
8月9日の「リニア中央新幹線静岡工区の当面の進め方について」を要約すると、「JR東海は中間意見書の最終的な回答を作成する。科学的な根拠等を示し、県民や利水者にやすいものとなるよう努める」「静岡県はJR東海から回答が提出された際には、速やかに専門部会を開催し、有識者等に委ねつつ円滑かつ迅速に進むよう努める」とあり、これは国土交通省からの強い要請と読み取れる。
しかし国土交通省の役割については、「静岡県の専門部会を見守りつつ、状況に応じて検討の促進等に努める」となっている。一歩引いた言葉を使っているけれども、筆者としては解決のためには積極的に動いてほしい。
JR東海に対しては「言葉や数値だけではなく、図面などを作成して理解しやすい回答を作れ」と指導すべきだし、静岡県に対しては「要求が科学的に見合っているか、工事前の段階で過度になっていないか」と確認すべきだ。
静岡県にとって大井川の流量減少は大きな損失であり、取り返しが付かない。しかしそれを盾にとって、必要以上に工事を停滞させれば、中央新幹線の利用者たる国民の損失は計り知れないだろう。