出稼ぎ労働の方向は逆転する
中国の成長率が高いことは広く認識されているが、あくまでも、「中国は日本より貧しい」という大前提の下のものだ。中国が日本より豊かになれば、この大前提が覆えされる。
2つの地点の高さが逆転すれば、水の流れの向きは逆になる。それと同じことが起きるのだ。
Xデイの到来は、まさにパラダイムの転換であリ、様々な面で日中関係に大きな質的変化をもたらす。
第一は労働力の国際間移動だ。
人口高齢化によって、将来の日本が深刻な労働力不足経済に突入することは、よく知られている。
これに対処する手段として、高齢者や女性の労働力率の引き上げが考えられる。
こうしたことは行われるべきだ。しかし、これらの実現のためにはさまざまな支援策などが必要であり、手放しで簡単に実現できるわけではない。
そこで、外国人労働者の受け入れ拡大が不可欠になる。
この必要性は認識されており、2018年には、出入国管理法が改正されて、新しい受け入れ枠が作られた。
ただし、多くの日本人は、日本が受け入れ枠を拡大すれば、外国人労働者が増えると考えている。
しかし、これは甘い考え方だ。なぜなら、日本の賃金が高いからこそ、外国人労働力を呼び寄せられるからだ。日本の賃金の方が低くなれば、外国人労働力は来ない。これまで述べたように、日中間において、これは現実の問題となる。
ところで、現在、日本の外国人労働力の最大の供給源は中国である(2018年10月で、外国人労働者数は 1,460,463 人。うち、中国が389,117 人で、全体の 26.6%:厚生労働省、「外国人雇用状況」の届出状況まとめ)。
したがって、中国人労働者を得られなくなることの影響は大きい。
ベトナムなど東南アジアからの労働者が期待されるかもしれないが、そうした人々は中国に行くだろう。
中国の方が豊かになった時代には、日本人が中国に出稼ぎに行かなければならない事態になるかもしれない。
こうなった場合に、日本の労働力問題は、現在予想されているよりもさらに厳しくなるだろう。
若い人口が日本からいなくなれば、社会保障の維持もさらに困難になるだろう。