2019.08.21
# 台湾 # 中国

中国の「文化発信力」低下を露呈させた、映画をめぐる残念な事件

欠落するソフトパワー戦略
古畑 康雄 プロフィール

「技術的原因」で上映中止

時に優れた作品が生まれても、結局はイデオロギーや政治が優先し、映画に限らず芸術家の創作活動は常に制限を受け、世界第2の経済大国にふさわしい文化発信力が伴っていない。

最近立て続けに起きた映画界の残念な出来事も、大国にそぐわない文化発信力の脆弱さを露呈しており、親中派のメディアすら「文化的自信のなさの現れ」と批判したほどだ。

 

最初に問題となったのは、映画「八佰」の上映禁止問題だ。

今年夏の話題作として、大手映画会社、華誼兄弟(Huayi Brothers)が製作。抗日戦争(日中戦争)初期の1937年10月、上海市にあった「四行倉庫」をめぐる日中両軍の激戦を最新技術、IMAXを導入して描いた戦争大作だ。

監督の管虎は「10年に1度の大作」として、歴史的考察にも力を入れ、脚本は40回も書き直し、兵士役の役者らは7カ月の軍事訓練を受けさせるほどの力の入れ方だったという。

映画の予告編は動画サイトで見ることができるが、戦闘シーンなど臨場感にあふれている。スーパーヒーローのような主人公が登場し、時代考証もでたらめな「抗日神劇(抗日とんでもドラマ)」とは比べ物にならない質の高さを感じる。中国国営メディアの新華社も6月初めに「2019年最も期待される国産戦争映画」との記事を出している。

映画は6月15日に始まる上海映画祭のオープニング作品として上映される予定だった。ところが前日、「技術的原因」を理由に上映中止が決まった。さらに、25日には7月5日の全国公開も突然中止と製作サイドがSNS、微博で発表した。

中国メディアの報道によれば、上映に横槍を入れたのが、中国社会科学院に所属する「中国紅色文化研究会」なる組織であり、「八佰」は中華人民共和国建国70周年を記念する作品として、国慶節(10月1日)に上映するのはふさわしくないとの結論を出したという。

関連記事