涙が溢れるのを止められない

私はゆっくりと身体を起こし、周囲を見渡した。満面の笑みで拍手をしてくれる参加者、遠藤氏、沖野氏、ウッチー、そして北村。彼らのうれしそうな表情を見ていたら、涙が溢れるのを止められなくなった。

「遠藤さんと沖野さんがね、義足を作ってくれて……ウッチーが一所懸命に身体の動かし方を教えてくれて。でも、僕がどれだけ頑張ってもなかなか結果がでなくて……迷惑をかけていたんです……」

嗚咽で、声が途切れがちになる。

「10メートル、はじめてなんですよ。よく『乙武さん頑張ってますね』って言われるんですけど、そうではなくて……僕が頑張っているんじゃなくて、チームで歩いているんです。それだけは……理解してくれたらと思います。みなさん、今日はありがとうございました!」

その日いちばんの大きな拍手に包まれながら、私はこの瞬間の喜びを忘れないでおこうと誓った。

写真左より沖野氏、内田氏、乙武氏、遠藤氏、北村氏 撮影/森清

見学会で会った女の子の決意

記念撮影が終わり予定のプログラムが終了しても、参加者のみなさんも私たちも、なかなかその場を去りがたく感じていた。遠藤さんもウッチーも、参加者に囲まれ話の輪ができあがっている。

私は、1回目の見学会で出会った少女のことを思い出していた。

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その子はお母さんといっしょだった。

「お年玉を使わずにとっておいた貯金で、クラウドファンディングに参加しました。わたし、大きくなったら義肢装具士になりたいんです」

埼玉県の小学6年生だという少女の話を聞いて、沖野氏と顔を見合わせた。

「テレビの番組で義肢装具士のことを紹介していて、すごい、おもしろそう、大きくなったらこういうことをやってみたいって思ったんです。七夕の短冊にも『義肢装具士になりたい』って書きました」

少女は熱心に「どうしたら義肢装具士になれるんですか」と沖野氏に尋ねている。

「専門の学校に通って、国家試験に合格すればなれるよ。そうしたら、うちに研修においでよ。なんでも教えてあげるから」

沖野氏はうれしそうに説明していた。
義足プロジェクトをそんな気持ちで応援してくれる小学生がいるなんて、想像もしなかった。私たちのプロジェクトが少女の未来を照らしているかもしれないと思ったら、また歩くための力がみなぎってきた。

さあ、家に帰ろう。
ゆっくり休んで、明日からの歩行練習に備えよう。

ランニングスタジアムを後にしようと思っていたところで、沖野さんに声をかけられた。

乙武さん、次回は義手の採型ですよ

そうだった。

乙武義足プロジェクトは、義手を活用する新しいフェーズに進むのだった。

構成/園田菜々

次回は9月1日公開予定です

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