物価上昇目標2%に固執して、世界の金利は間もなく「水没」する

「最大の被害者」は、資産運用業と家計
高田 創 プロフィール

「金利は低ければ低い方がいい」は誤りでは

ただし、こうしたマイナス金利策は図表3に示されるように、家計や資産運用業の収益にとってマイナスだ。そうした中では、一定の財政規律を維持しつつも財政を活用し、家計等に再配分を行うことも必要になる。

高齢化社会における金融の大動脈は、家計の預金から企業への融資ではもはやなく、世代間を繋ぐ金融、すなわち資産運用となる。こうした環境では一定の金利の存在が資金フローの源になる。

今日の世界では、通貨戦争のなかで各国の利下げ競争が極端なマイナス金利を生む。しかも、米国も利下げ参戦で世界の金利が失われつつある不安が生じている。今や、金利は低ければ低い方がいいとの発想も改める必要があるだろう。

 

世界は協調し金利低下・通貨戦争の悪循環阻止を

このように、今日、米国が利下げに参戦し、2%物価目標に固執して金利を引き下げ、加えてトランプ政権が通貨戦争に踏み出すと世界全体の利下げ競争、通貨戦争に歯止めが無くなる不安が生じる。その結果、世界レベルで資産運用業と家計にマイナスの影響が及び、金融市場での歪みが一層拡大する。

こうした悪循環を断ち切るには各国が協調して水没ゲームを止めることも必要であろう。

1970年代の変動相場制移行以来、G7を中心に各国の協調した金融財政政策が行われてきた。しかし、現実には米国トランプ政権下ではG7のなかでも分断が生じ、協調が生じにくい状況にある。

それだけに、米国第一主義に伴う通貨戦争が生じれば、行きつくところまで行かないと終わらないゲームのような状況にある。

米国がマイナス金利になって初めて物価目標の妥当性、マイナス金利の副作用への議論がアカデミスムでも生じうる。ただし、そこまでたどりつくまでの副作用に世界は当分の期間、耐える必要がありそうだ。

今年のヒット映画、『天気の子』は世界の金利水没への警鐘を鳴らすものだったのかもしれない。

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