厚労省が発表した2018年度の男性の育休取得率は6.16%であった。これは「名ばかり育休」とも呼ばれる取得日数の短い育休を含めた数字だ。取得日数1ヶ月以上の長期の取得率に至っては、わずか1%程である。対して女性の取得率は、10年以上前から80%を超えている。

ここまで極端に男性が育休を取得しない理由は何か。三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた「2017年度労働者調査」によると、男性が育児休業を取得しない理由トップ3は、

「職場の人手不足(39%)」
「職場の取得しづらい雰囲気(34%)」
「自分にしかできない仕事また担当している仕事がある(22%)」

となっており、どれもパートナーや家族側ではなく、自身また職場側に関する理由で占められている。

つまり、たとえわずかな期間であっても、新しい命を自身の手で育てること、またパートナーのキャリアを中断させないことより、自身のキャリアを中断させないことを優先させる男性がほとんどということである。

では、上記の理由を振り切って育休を取得した男性、またその家族にはどんな未来が待っているのだろうか。そのひとつの答えとして、キャリア1年目に4ヶ月の育休を取得した男性研究者である私の「育休取得からの10年間」を紹介する。

 

2人のキャリアがある中での決断

私たち夫婦の上の子は、私が博士取得後に任期3年のいわゆる「ポスドク」として研究者のキャリアをスタートさせた1年目の夏に生まれた。妻はその当時、修士課程2年目の大学院生であり修士論文の提出を控えていた。

「ポスドク問題」として度々話題になるように、長期職のポストが限られている現在の研究業界において、若手研究者は短期職を渡り歩くことでキャリアを繋ぐ必要があり、私のキャリアにとっては次の職に繋げるためにも、少しでも早く成果を上げることが望まれる時期であった。

同時に、研究者を目指していた妻のキャリアにとっても、それまで積み上げてきた成果を修士論文としてまとめ博士課程に進学できるかどうかがかかった、とても大事な時期であった。

このようにそれぞれのキャリアがある中で私たちは夫婦は、夏に生まれる子供を翌年の春から保育園に通わせること(当保育園は生後半年以上で0歳児から入所可能)を念頭に、出産前後の数ヶ月間は妻が大学を離れ、その後妻が復帰するのと交代で私が4ヶ月間の育休を取得することを決めた。

この決断が私たち家族に何をもたらしたのか。