「犯行の最中だけは、無敵になれる」
以後、光彦の凶暴性は堰を切って溢れ出し、一九歳になって一〇日余り後、酸鼻を極める強姦事件を引き起こす。犠牲者は深夜、帰宅途中の女性(二四歳)だった。手紙にこう綴る。
《いきなり後ろから髪の毛をわしづかみにしてひきずり倒し、顔から血がしたたり落ちるまでアスファルトに何度も頭を叩きつけるという、ただの性的暴力とは異なる、限りなく八つ当たりに近い、非道いものでした。それでも手は止まらなくて、さらに鼻の骨が折れたのを確認しながらも、鼻血まみれの顔を夢中で殴り続けるという徹底ぶりで、ひと頻り衝動が収まるまで力まかせに暴行を続けたのです》
ぐったりした女性をクルマに乗せ、自宅アパートに連れ込みレイプ。光彦は暴力の持つ達成感、陶酔感を告白する。
《傷害にしろ、強姦にしろ、他人の血を見るということは興奮するものです。とくに、しだいに相手が弱ってきて自分に従うようになり、どうにでも好きなように動かせるようとなった時に見るそれは、僕の中では勝利の象徴として溜飲を下げるのに大いに役立ちました》
この凄惨な強姦がきっかけになり、光彦の中にこれまで感じたことのない“自信”が生まれる。
《少なくとも犯行の最中だけは、いつもの自分とは違う無敵になれますから、次はもっとそれ以上のものをと、自分はどこまでできるのかを知りたいと際限なくエスカレートしていく欲求を抑えられなくなり、感覚も段々麻痺していきました》
第二の強姦は翌日深夜、僅か二二時間後である。場所は千葉県市川市。コンビニで買い物を済ませ、自転車で帰宅途中の少女(一五歳 県立高校一年)に目を付け、背後からクルマで追突。自転車ごと転倒させた。
光彦は怪我を負った少女に優しく声をかけ、救急病院へ同行した。治療が終わった後「自宅まで送ろう」とクルマに乗せるや、豹変。折りたたみ式ナイフを取り出し、刃を少女の指の間にこじ入れ、こね回し、ほおを切りつけ、「黙っておれの言うことを聞け」と脅した。

突如、牙を剥いた暴力に恐怖し、震える少女を自宅アパートに連れ込み、二度強姦。欲望を満足させた光彦は少女の持ちモノを改め、現金を奪い、高校の生徒手帳から住所、氏名を控えている。
その後、フィリピン人ホステスを拉致したかどでヤクザの集団に追われ、慰謝料として二百万円を請求される。弱者には滅法強い非情なワルも、暴力のプロであるヤクザには手も足も出ない。震え上がり、承諾するしかなかった。
手っ取り早くまとまったカネを作ろうと、二度の恐喝を試みるが(いずれもクルマ絡みのトラブルに乗じたもの)、失敗。追い詰められた光彦は市川市の江戸川河口近くに建つ分譲マンションに押し入る。少女の自宅である。第二の強姦から二〇日後の凶行だった。