3歩歩くのがやっと

原因は私の身体のいびつさにあった。人がまっすぐ立っているとき、普通なら腕は真下に下がるものだが、私の腕は45度ほど前方にせり出していて、緩やかな「前へならえ」のような姿勢になる。両腕の動きをコントロールする大胸筋を日常生活で使うことがほとんどないため固く縮んでおり、そのため両腕がいつも持ち上がっているというのが内田氏の見立てだった。

しかし、原因がわかったからといって、すぐに身体が言うことを聞くわけではない。あれこれ試行錯誤して見たものの、私はすっかり自分の「立ち位置」を見失っていた。

ダメだ。立てない……

私は情けない声を漏らし、振り出しに戻ったような絶望感に打ちのめされていた。

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さらに、立てないだけではなく、短時間で激しい腰痛に襲われるという問題も発生していた。前に倒れないように身体を後ろに反らすことで、いつも以上に腰に負担がかかってしまうのだった。

結局、この日の練習では3歩ほど歩くのがやっとだった。義手の先端をマネジャーの北村に持ってもらいながら歩いたのだが、「気づいてないと思いますが、僕の手には20キロ近く体重がかかってますからね」と指摘されてしまった。

撮影/森清

内田氏が今後の対策を説明した。

「立てなくなったのは一時的な現象で、義手がついた状態に脳が慣れれば、また立てるようになると思います。腕を下げるには、肩甲骨の可動域を広げるしかありません。引き続きストレッチに取り組みましょう。腕が下がれば、腰の負担も軽くなりますよ」

課題が明確になれば気持ちも前向きになるものだが、そう言われてもまた歩けるようになるのか、不安な気持ちは残ったままだった。

この日は、もう一つの軽量化も行われた。脛にあるバッテリーケースからバッテリーが外されたのだ。片足でマイナス400グラム。またもとのように立ったり歩いたりできるようになればこの減量は利いてくるはずだが、この日はそれどころではなかった。今後、膝の機能をオンにする際は、バッテリーは腰に装着し、足に負担をかけないことも確認された。