神戸市では、郊外のニュータウンに移住する子育て世代の住民に対して補助金などの支援を実施するとしているが、今の子育て世代は、郊外のニュータウンが高齢化、過疎化していったプロセスをこの目で見ている。長期的に十分なフィジビリティ(実現可能性)のある計画を打ち出さないと、目先の支援金だけで彼等を説得するのは難しいだろう。仮に中心部のタワマン建設を抑制しても、その分、規制対象エリア外のタワマン建設が加速するリスクもある。
市場の流れには無理に逆らわず、都市部への集約化によって発生する諸問題について、順次、対処していく方が無理なく政策を継続できる可能性が高い。
一部からはタワマンの乱立はスラム化のリスクがあると指摘する声も出ているが、もしそうであるならば、なおさらタワマン建設は中心部に限定した方がよいだろう。
日本において大規模なタワマンを長期にわたって管理した事例はほとんどない。30年、50年と年月が経過したタワマンがどうなるのか正確に予想されているわけではなく、各デベロッパーも手探り状態と考えられる。一般論として、タワマンは低層マンションと比較すると修繕コストが高いので、積立金不足で管理が難しくなる物件が出てくる可能性はそれなりに高いはずだ。
だが管理不全でスラム化するというのは低層マンションでも発生する問題であり、必ずしもタワマンだけの話ではない。管理不全になるかどうかを分けるのは、たいていが立地要因であり、購入や賃貸の需要が途切れないエリアの物件であれば、管理体制が不備であっても何とかなるケースが多い。逆に言うと、立地が悪い物件の場合、当初の管理体制が良好でも、スラム化するリスクは高いということになる。
人口減少を前提にした都市計画が必要
中心部でのタワマン建設を規制した場合、立地の悪い郊外のタワマン建設を促進させてしまう可能性があり、管理不全という点では、こちらの方が圧倒的にリスクは高い。すべてのエリアでタワマンを一律に禁止するということであれば、それは一つの選択肢かもしれないが、あまり現実的ではないだろう。
これは、人口動態と都市計画に関する問題であり、タワマンの管理の難しさはまた別の話といってよい。こうしたテーマについて議論する際には、複数の要因を混同しないよう留意する必要がある。