なぜ「がん」についての情報はウソが蔓延するのか? 専門医のホンネ
私はそれを我慢できないウェブサイト、週刊誌、書籍、はては親しい知人までも信憑性の低い情報を垂れ流す現状に憤り、がん専門医の中山氏はある決断をした。誤った情報が飛び交う世界を変える、ホンネの短期連載スタート。
「がんは治療しないほうがいい」は本当か?
初めまして、医師の中山祐次郎と申します。大腸がんの手術を専門とする外科医で、抗がん剤などがん治療を幅広くやっています。
この度、マネー現代で連載をさせて頂くことになりました。
二人に一人はがんにかかる時代ですが、病院で医者をやっていても「がん患者さんが増えたな」と実感することはよくあります。
ある日のこと。
いつものように私は自らの勤める病院の外来で「今日はどうされましたか」と患者さんとお話をしていました。その日は夕方に「新患」と呼ばれる、初回の患者さんがいらしたのです。
その中年の男性に話を伺うと、「実は去年のいまごろがんと診断されたのですが、色々調べたら『がんは治療しないほうがいい』『抗がん剤は危ない』『こういうサプリがいい』という情報がでてきて、それで病院に行くのをやめたんです」と。

検査をすると、がんは体中に転移し、もはや手術ではどうしようもない、取り切れない状況でした。
去年診断されたときに受けていた検査結果を見ると、ステージは4までいっておらず、CT画像を見ると手術で取り切れるものでした。
私は非常に悔しい思いをしました。
患者さんに「以前手術していれば取り切れたこと」「いまは治る可能性はまずないこと」をそのまま伝えることは酷でしたので、「これから頑張りましょう」とだけ言ったのです。
実は、このような経験をした医師は実にたくさんいます。
というより、このような経験をしたことがない、がんを専門とする医師にはほとんど会ったことがありません。
ちゃんと調査をしたことはありませんが、怪しい情報により「極めて重大な」レベルの不利益を被った人はかなりの人数にのぼるでしょう。