2019.09.18
# アパレル

ユニクロ、無印良品、ニトリ…繁盛店はなぜ「価格帯が狭い」のか?

財布の紐をゆるませる秘密
利益の95%は「価格戦略」で決まる! そう説くのは、著書『「値づけ」の思考法』で知られるマーケティング学の大家で、法政大学教授の小川孔輔氏だ。ユニクロ、無印良品、ハニーズ、しまむら、ニトリ……繁盛している小売りチェーンには、ある共通点がある。それは、いずれも「価格帯が狭い」ということだ。それがなぜ、繁盛に結びつくのか? 小川氏に解説してもらった。

「考えるコスト」を減らす

適切な価格を設定するために、コストを積み上げて検証するのは、もちろん大切なことです。

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だからといって、モノをつくってコストが確定してから価格を決めていては、このご時世ではまったく売れません。勝ち残るためには、スピーディで、ひとひねりした価格のつけ方が必要なのです。

では、競争に強い企業では一体、どのように価格を設定しているのでしょうか?

近年、私が注目している小売業のチェーン店は、ユニクロ、無印良品、ハニーズ、しまむら、ニトリです。これらの共通点は、プライスライン(価格帯)がとても狭いことです。

ショッピングの醍醐味は、たくさんのデザインや価格帯の中からお気に入りの一品を選ぶことにあるはずですが、価格帯が狭い店のほうが繁盛するのはなぜでしょうか?

 

マーケティングの教科書には、「消費者の多様なニーズに合わせて品ぞろえすべき」とよく書いてありますね。しかし、それが必ずしも正解とは限らないのです。

同じ商品カテゴリーで、高額のものから安価なものまで、価格もデザインも豊富に品ぞろえしてあるファッション衣料品店を考えてみてください。

価格帯がいくつもある店では、お客は商品ごとに品質と価格を比べて検討する必要があります。百貨店に出店しているブランドショップがそうです。その場合、買い物に時間がかかります。

その時間的・心理的な負担を、マーケティング用語では、「コスト・オブ・シンキング」(Cost of Thinking)といいます。つまり、「考えるコスト」のことです。

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