選択肢を狭める沖縄の現状
沖縄の教育現場において、進路の選択を狭めている要因とはなんだろう。
まずは、沖縄の学力や大学進学率の現状に目を向けてみよう。
「学校基本調査 平成30年度 文部科学省」の県別の大学進学率ランキングを見ると、沖縄県は35.7%で鹿児島県、鳥取県に続き、下位に位置している。1位の東京都の62.4%とは大きなひらきがある(2018年)。
さらに、沖縄県内で優秀な生徒の多くが琉球大学を目指す。県外からの移住者など以外は、琉球大学への進学が保護者や教師の希望となるのだ。
高校生の進路状況の要因に対して最初に思い浮かぶのが、学力の問題だろう。
全国学力学習状況調査(中学校)を見ると、沖縄県は国語B以外すべて最下位となっている(2018年)。
その他にも、歴史的・経済的理由も挙げられるだろう。
1972年に、沖縄は本土返還がなされる。そして、1979年にはセンター試験の前身である共通一次がはじまった。沖縄が日本に復帰してわずか7年後のことだ。
当時の受験競争や偏差値至上主義の波に乗れるのはタイミングとして困難だ。
私は、この競争に乗るべきだったと言いたいわけではない。事実として、日本全国と沖縄県が足並みをそろえて高度経済成長に乗り、受験戦争を繰り広げるには至らなかったのだ。
また、平均賃金の安さも挙げられよう。最低賃金を見ると、東京都が985円なのに対し、沖縄県は762円だ。
県内の高校で、「最低賃金762円を守ろう!」というポスターを掲げられていたのを見たが、この低い最低賃金すら守っていこうと呼びかけられている現状がある。個々の家庭が、教育へ投資することの難しさもあるだろう。
そして、実際の学校教育を見ても少し驚いたことがある。
大学受験を考えている生徒が通う高校のカリキュラムをホームページから確認すると、そもそも入試仕様になっていなかったという出来事があった。
少し込み入った話をするが、入試の際、受験科目として大学側は「日本史B」を指定していることが多い。「日本史B」は、「日本史A」よりも詳細な内容を学ぶことになる。
しかし、上記の大学受験をしたいと考えている生徒が通う高校は、大学受験対応ではない「日本史A」しかカリキュラムに組み込んでいなかった。
沖縄でも進学校は「日本史B」を設定しているが、就職や専門学校へいく子も多い進路多様校では「日本史A」としているケースもある。
そうしたカリキュラムのもとで受験を目指した場合、予備校や自学のみで「日本史B」の知識をつけなければならない。
こうした高校に通った子どもたちの受験ハードルは確実に上がってしまう。
こうした高校は他県にもあるが、補習を行なっていたり、自校のカリキュラムと志望のマッチングを見て進路指導をしていたりする。高校内で学習を補填をできるよう指導を充実させているのだ。
しかし、私が聞く限り、その高校がサポートをしている様子はなかった。
こうした歴史的・経済的な背景から、沖縄の教育は難しい局面を迎えている。